やさしく始めるaltテキストの書き方

読者のみなさまは、教室サイトや遺墨展、企業サイトで画像の説明文を書く場面が多いと思います。けれど「アクセシビリティ(利用しやすさ)とSEO(検索エンジン最適化)をどう両立するのか」「装飾画像は空欄でよいのか」「画質や解像度(画像の細かさ)をaltに入れるべきか」など、迷いどころが重なります。本記事では、実務で迷わないための判断基準、手順、チェックの考え方を順に整理します。読み終えるころには、作品写真やポスター画像でも一貫した品質で書けるようになり、校正・差し替えも短時間(目安:1枚あたり約5分)で回せる状態を目指します。

基礎理解:altテキストの役割と目的

アクセシビリティ(利用しやすさ)とSEO(検索エンジン最適化)

altテキストは、画像が表示されないときやスクリーンリーダー(読み上げソフト)が内容を伝えるときに機能する「代替の説明文」です。まず第一の目的は、視覚情報を言語化して誰にとっても情報が届く状態にすることです。ここでは「何が写っているか」「ページの文脈で何のための画像か」を短く明快に伝えることが重要です。
一方、SEOには過度に最適化する必要はありません。キーワード詰め込みは読みづらく、意図が不明瞭になります。検索流入は「的確な説明」を積み重ねた結果として得られると考えるほうが安全です。例えば、夏の展覧会告知バナーなら「水彩画クラスの夏期展覧会を告知する横長バナー。会期は7月20日~7月28日」など、内容と目的がわかる書き方が適切です。リンク先が申し込みページであれば、その行き先を明示するほうが利用者に親切です。

alt・キャプション・ファイル名の分担

altにすべてを詰め込む必要はありません。キャプション(画像の横や下に置く説明)には作品名・作者名・素材・制作年などの整理情報を置き、ファイル名は管理や検索に役立つ簡潔な要素(例:「exhibition_2025_poster.jpg」)にとどめます。altは閲覧者に「今、このページでこの画像が何か」を最短距離で伝える担当です。例えば作品写真なら「油彩の静物画。中央に赤いリンゴ、暗い背景、額装は金色」のように、見て取れる特徴と鑑賞の手がかりを中心にまとめます。著作権表示や長い解説はキャプション側に任せたほうが読みやすさと保守性が高まります。

書き方の判断基準と長さの目安

何を書くかの優先順位(見たまま→意図→文脈)

迷ったら「見たまま→意図→文脈」の順で考えると安定します。まずは形・色・配置・動作など、視覚的事実を短文で記述します。次に、ページの目的に関係する意図があれば補います(例:授業紹介、展示告知、申込導線)。最後に、同一ページ内で同種の画像が複数ある場合は識別に役立つ差異も入れます。例えば抽象作品なら「青と黒の筆致が斜めに交差する抽象画。中央左に濃い滲み。F10号程度」のように、鑑賞に必要な“入口”を置きます。長い解釈や作家論はキャプションや本文に回し、altは2~3文で読み上げても息切れしない量を意識すると良いです。

文字数・文体・表記ルール(約物、数字、表記ゆれ)

日本語のaltは「約50~120字」を目安に、短文×2~3本でまとめると読み上げでも負担が少ないです。文体は常体・敬体のどちらでも構いませんが、サイト全体で統一します。数字は半角、単位は全角で表し(例:90分、300dpi)、全角・半角の表記ゆれを避けます。専門語は初出で言い換えを併記し、以後は簡潔に使います。句読点や読点は過剰にせず、読点は1文あたり1~2回までにしてリズムを整えます。固有名詞は読み上げ誤読を避けるため正式名称を採用し、略称は必要なときだけ括弧で補足します。

空のalt(alt=””)にする判断

装飾目的の罫線や背景パターン、意味を持たないアイコン類は「空のalt(alt=””)」が適切です。このとき、画像にリンクが付いていないこと、近接のテキストが同じ情報を提供していることを確認します。逆に、ボタンやバナーなど操作に関わる画像は空にしてはいけません。リンク先や操作の結果を説明する短い文(例:「夏期講習の申し込みページへ」)を入れます。コンテンツ画像か装飾画像かで迷うときは、画像を削除しても本文の意味が変わらないかをテストすると判断しやすいです。

画像タイプ別の基本例(美術・書・告知)

作品写真(絵画・立体・抽象)

作品写真は、視覚的特徴とジャンルに応じた要素を優先します。絵画なら主題・色調・筆致、立体なら材質・形状・設置状況、抽象なら支配的な色・動き・構図上の重心などが入口になります。例えば絵画の場合は「暖色の花瓶を中心に置いた静物画。厚塗りで質感が強い。背景は暗い茶色」。立体なら「白い石膏像の胸像。正面からの照明で影が浅い。台座は黒」。抽象は「群青の帯が斜めに走る抽象画。中央に金色の点が散る」。サイズや技法はキャプションに任せつつ、鑑賞に関わる視覚情報を簡潔に言葉へ移します。

書作品・遺墨の写真

書作品・遺墨では、文字の内容を短く示すか、読めない場合は筆致や構成を中心に伝えます。例えば「和歌の一節を草書で書いた掛軸。太い起筆と速い運筆、ところどころに墨のかすれ。右下に落款」。読める場合は「『花冷え』の二字書。力強い縦画とにじみ。白地の色紙に黒墨」。人物名や出典などの詳細はキャプションに置き、altは視覚的な手がかりと内容の最小限の要約に絞ると、読み上げ時間を抑えられます。拓本や古文書の写真も同様に、可読性と画面の特徴を短く伝えると実用的です。

告知画像・ポスター・リンク画像

ポスターや告知画像は「要点の要約」を原則にします。イベント名、会期、会場、連絡方法のうち、ページ文脈で不足する情報を優先します。例として「水彩クラスの作品展を告知するポスター画像。会期は7月20日~7月28日、会場は〇〇ギャラリー」。リンク画像なら行き先を明示し、「夏期講習の申し込みページへ」「受講生作品一覧へ」など、操作の結果を最短で伝えます。細かな利用規約や注意書きまで読み上げると冗長になりやすいため、本文やキャプションで補完します。

目的判断基準OK例NG例
作品鑑賞の補助見たまま+鑑賞の入口を端的に「青と金が交差する抽象画。中央左に濃い滲み」「とても素敵で美しい作品です」
書作品の要約可読性の有無で方針を変える「『花冷え』の二字書。太い筆致、にじみが強い」「〇〇先生作。電話090-XXXXは…」
告知要約要点(イベント名・会期・会場)を優先「夏の作品展を告知。7月20日~7月28日、〇〇で開催」「詳細はWebで!!!」
操作用画像行き先や結果を明示「夏期講習の申し込みページへ」「こちら」「クリック」
装飾画像削除しても意味が変わらないalt=””(空)それらしい説明を入れてしまう
写真の人物役割と状況を簡潔に「受講生2名が水彩の陰影練習をする様子」氏名や不要な個人情報を列挙
解像度・画質altではなくキャプションへaltは内容説明のみ「300dpi、高精細、最高画質」
表記統一サイト全体の基準に従う半角数字・全角単位で統一ページごとにバラバラ

運用設計:CMS・SNSで迷わない入力ルール

運用では、書き方の良し悪しだけでなく「どの欄に、どの情報を入れるか」を迷わない設計が重要です。ここではCMS(コンテンツ管理システム=サイト更新の仕組み)とSNSの入力欄を前提に、ぶれないルール作りをすすめます。方針は、ページ文脈を最優先し、altは短く正確、作品情報はキャプション側で整理、管理情報は台帳とファイル名で扱う、の分担です。

CMS別の入力欄の考え方と項目設計

CMSには、alt、タイトル、キャプション、説明など複数欄がある場合があります。基本は、alt=画像の役割や見たままを短文で、タイトル=一覧表示名、キャプション=作品名・作家名・素材・制作年・所蔵など、説明=長めの補足、と分担します。装飾画像はaltを空にし、操作画像は行き先を示します。数字は半角、単位は全角で統一し、表記ゆれは台帳で管理します。
登録前には「画像をページから外しても意味が通るか」を自問し、通るなら装飾寄り、通らないなら内容説明が必要と判断します。メディアライブラリ(画像保管庫)では、ファイル名に「用途_年月_識別子.jpg」のような簡潔な規則を導入すると検索性が高まります。長文になりやすい解説や著作権表示はキャプションへ逃がし、altは約50~120字を目安に短く整えます。

作品群・連番・展示位置の扱い(展覧会ページ)

展覧会ページでは、同種の画像が連続し識別が難しくなります。altでは「識別に効く差異」を短く入れ、連番や壁面位置などはキャプションか台帳に集約します。例として、「静物画のシリーズ、青い瓶を中心にした1点目。左に赤いリンゴ、背景は暗め」とし、連番は「No.01」をキャプション側に置きます。会場図との対応が必要な場合は、キャプションに「壁面A−03」などの位置情報を明記し、altは視覚の手がかりを優先します。
書作品・遺墨は、可読性の有無で方針を切り替えます。読める場合は短い文言要約+筆致の特徴、読みにくい場合は配置・濃淡・運筆など視覚情報を主とします。シリーズ掲載時は、「掛軸の全体」「落款の接写」のように撮影意図の違いも示すと、連続閲覧での混乱が減ります。

SNS投稿のalt運用(XやInstagramなど)

SNSでは、本文とaltが別チャンネルで届く点に留意します。本文は告知や感想、ハッシュタグ(検索用の目印)などを置き、altは画像内容の要約に集中します。ハッシュタグやURLはaltに入れず、作品名や会期の要点を短く伝えます。複数画像の投稿では、各画像の視覚的役割が異なるため、同一文の使い回しは避けます。例として「展示ポスター」「会場外観」「作品接写」「作家プロフィール」のように、画像ごとの焦点を変えて書きます。
予約投稿を使う場合は、台帳に「公開日時」「投稿枚数」「各altの草案」を事前登録しておくと抜け漏れが減ります。クロスポスト(同内容を複数SNSで共有)時は、画像枚数や比率の違いで切れやすい要素が変わるため、altは独立して調整します。人物が写る授業風景では、人数・動作・目的を短く記し、個人の特定につながる不要情報は避けます。

ジャンル要素避ける言い方代替案
抽象絵画色・動き・重心「かっこいい抽象画」「群青の帯が斜めに走る抽象画。中央に金色の点が散る」
具象絵画主題・色調「素敵な静物画」「赤いリンゴを中心にした静物画。暗い背景、厚塗りの質感」
彫刻・立体材質・形状「すごい彫刻」「白い石膏の胸像。正面光で影が浅い。台座は黒」
書・遺墨文字要約・筆致「達筆です」「『花冷え』の二字書。太い起筆とにじみ、右下に落款」
ポスター要点の要約「詳細はWebで!」「夏の作品展を告知。7月20日~7月28日、〇〇ギャラリー」
授業風景人数・行為「生徒が楽しそう」「受講生3名が水彩の陰影練習をする様子。講師が手元を指す」
企業資料種別・年代「古い紙の写真」「1970年代の社内報の表紙。青いロゴ、右上に発行号」
地図・案内目的地・手掛かり「道順は画像参照」「会場への案内図。最寄り駅は〇〇、出口Aから徒歩5分」

品質管理:チェックフローと自動化の考え方

公開後の安定運用には、校正と点検の流れを固定化することが近道です。ここでは、人手のレビュー手順と、抜け漏れを機械的に見つける仕組みを組み合わせ、改善のための指標を見る順番を示します。完璧を目指すより「いつでも直せる」体制を優先すると、持続的に品質が上がります。

校正・レビューの手順(読み上げテストと表記統一)

まず、台帳(画像一覧の表)に作品名・作家名・公開先URL・alt案・キャプション案を並べ、担当と期限を明記します。初稿では、読み上げソフト(スクリーンリーダー=読み上げ機能)で実際に再生し、息継ぎが多すぎないか、冗長な修飾がないかを確認します。次に、数字の半角統一や単位の全角統一、固有名詞の揺れを校正します。
レビューでは「装飾画像なのに説明していないか」「操作画像の行き先が不明ではないか」を重点的に見ます。リンク画像は目的地や結果を必ず示し、同一ページ内の類似画像は差異が伝わるかを確認します。所要時間は1画像あたり約3~5分を目安とし、定期的にまとめて見直す時間を確保します。

alt未設定の検出と差し替え(点検のしくみ)

点検は、人手の見落としを前提に仕組み化します。CMS側では、alt未入力時に保存できない「バリデーション(入力時の自動チェック)」を導入できる場合があります。導入が難しい場合でも、公開前チェックで「画像数」と「alt記入数」を突き合わせる表を作ると、差分が見つけやすくなります。
公開後は、サイトマップ(ページ一覧)を起点に巡回し、テンプレートごとに代表ページを月1回確認します。開発者ツール(コード閲覧機能)でimg要素の有無とalt属性の状態を点検し、装飾画像はaltが空か、内容画像は適切に記述されているかを見ます。差し替えは台帳に反映し、履歴列に日付と担当を残すと、改善経緯が追いやすくなります。

効果測定と改善(CVR=申込率、CTR=クリック率)

効果の見方は、目的別に指標を分けると迷いません。申込導線の画像はCVR(申込率=申込数÷セッション数)、一覧導線の画像はCTR(クリック率=クリック数÷表示回数)、作品鑑賞の補助は離脱率や滞在時間の改善を観察します。altそのものは直接の順位決定要因ではなくても、文脈説明によりクリックの質が上がることがあります。
改善は、まず「過度な情報の削減」から始めます。要点が1文に収まらない場合は、要約を見直し、詳細はキャプションへ移します。次に、同種画像のaltを横並びで比較し、差異が伝わる書き方になっているかを確認します。最後に、変更後の指標を台帳に追記し、2週間程度のスパンで小さな差を積み重ねる運用にすると、無理なく継続できます。

公開運用とトラブル回避

公開直前から直後にかけては、書き手の判断だけでなく「流れ(ワークフロー=作業の手順)」の設計が品質を支えます。ここでは、担当者が交代しても同じ結果に近づけるための公開前後フローを示します。ポイントは、ページ文脈の再確認、読み上げテスト(スクリーンリーダー=読み上げソフトでの確認)、代替導線の確保(画像が読めなくても伝わる工夫)の3点を、毎回の点検に組み込むことです。さらに、変更履歴の記録(バージョン管理=変更の保存と追跡)、差し戻し(ロールバック=元に戻す)の準備を事前に整えておくと、公開後の修正も落ち着いて行えます。

対応運用:公開前後のフロー

公開日の前日までに台帳(画像一覧表)を最新化し、alt案・キャプション案・リンク先をひと目で突き合わせられる状態にします。公開直前は、代表ページで「画像を削除しても意味が通るか」の簡易判定を行い、装飾画像に説明を書いていないかを確認します。公開直後は、読み上げテストと実機(スマホ・PC)での確認を行い、本文との重複や誤読を修正します。修正は必ず台帳に反映し、次回のテンプレートに学びを残します。

工程担当所要時間確認項目
台帳更新(画像一覧)担当者A30分画像枚数、alt案、キャプション案、リンク先URLの整合
文脈確認(代表ページ)担当者B15分画像を外しても意味が通るか、装飾画像の洗い出し
alt最終調整担当者A20分50~120字目安、見たまま→意図→文脈の順、半角数字・単位整合
キャプション校正校正者20分作品名・作家名・制作年・技法、著作権表示の所在
画像最適化制作25分解像度(画像の細かさ)・容量・ファイル形式、色味崩れの有無
ステージング確認(仮公開環境)担当者B15分スクリーンリーダー読み上げ、リンク画像の行き先説明
公開・キャッシュ更新担当者A10分反映遅延の有無、サムネイル差し替え確認
公開後チェック(実機)担当者B20分スマホ・PCでの表示差、SNSカードの要約と画像切れ
事後記録・振り返り全員15分修正点を台帳に追記、次回テンプレへ反映

公開後の不具合対応は、重大度で優先順位を決めます。申込導線や注意喚起に関わる画像は最優先(例:最上位で即時修正、目安:60分以内)。作品写真の表現ぶれは次順位で、週次のバッチ対応に回します。SNSでの拡散を伴う場合は、本文の追記や固定ポストで補足し、altの修正だけに依存しない情報提供を心がけます。多言語対応は、英語版のaltを簡潔に別途用意し、固有名詞は公式表記を採用します。数値や会期は半角数字+全角単位で統一し、会期変更の差し戻し手順を台帳に明記します。

【注意喚起】写真の同意や著作権・肖像権・二次利用に関する記載は、一般的な配慮事項として案内するにとどめます。個別案件の可否や契約の有効性などの法的判断は専門家へ相談いただく前提で運用します(本記事は法的助言ではありません)。

まとめ

altは「見たまま→意図→文脈」の順で短く整え、装飾画像は空、操作画像は行き先を明示するだけで多くの迷いが解けます。台帳で案と掲載先を突き合わせ、読み上げテストで息切れしない長さ(目安:50~120字)に収めると、公開後の手戻りが減ります。効果検証は目的別に切り分け、申込導線はCVR(申込率)、一覧導線はCTR(クリック率)、鑑賞補助は滞在時間や離脱率を観察し、小さな修正を積み重ねます。
最後に、同一シリーズの画像では差異を短く言語化し、台帳・テンプレート・事後記録を通じて学びを再利用します。これにより、担当が替わっても品質が揺れにくい状態を保てます。

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