実例でわかる図録制作料金の基礎と予算設計・見積りの手引き

予算設計の基本

図録づくりの費用は、作品の撮影・データ整備、編集・デザイン、校正(誤りを直す工程)、印刷・製本、梱包・配送といった工程の積み上げで決まります。まずは「何のために、誰に渡すか」という目的と読者像をはっきりさせ、必要な品質の水準を決めると全体の予算が組みやすくなります。たとえば会場配布用の小冊子か、販売も視野に入れた保存性の高い一冊かで、紙や綴じ、ページ構成は変わります。続いて、部数・判型・ページ数を仮決めし、撮影点数や編集の工数(作業時間)を見積もります。一般的な進行は、撮影と原稿整理に約1~2週間、編集・デザインに約2~4週間、校正2回で約1~2週間、印刷・製本に約1~2週間という並びです(規模や混雑で変動します)。見積書では「何が含まれていて、何が別費用か」を必ず確認し、総額だけでなく1部あたり単価や1ページあたり単価でも比較すると判断がぶれにくくなります。

目的と読者像で必要水準を決める

目的と読者像を決めると、仕様の優先順位が整理できます。教室の発表会で配るなら、持ち帰りやすいB5やA5の並製(ソフトカバー)でフルカラーを基本に、写真を大きめに掲載すると満足度が高まりやすいです。遺墨展の記録や販売も想定するなら、A4で紙をやや厚めにし、保存性を意識した糸かがりやPUR製本を検討すると良い場合があります。企業の社史・記念誌では、読み物ページが増える傾向があるため、本文書体の可読性や索引・年表の作り込みに編集時間を配分します。展示図録は写真の再現性が重視される一方、社史は資料の正確さや本文構成の整合性が重視されやすい、という傾向を念頭に置くと配分の目安になります。必ずしも高価な仕様が正解ではありません。配布シーン(会場/郵送)、保管期間(短期/長期)、読者の閲覧時間(立ち読み中心/熟読)を具体的に想像し、必要十分な品質を狙う姿勢が無駄なコストを防ぎます。

部数・判型・ページ数の決め方と料金への影響

費用への影響が大きいのは、部数・判型・ページ数です。部数は需要予測と在庫リスクのバランスで検討します。目安として、会場配布中心なら来場見込み×0.7~0.9、販売併用なら初回は500部前後から検討し、売れ行きを見て増刷という手順も現実的です。判型はA4が写真再現に有利ですが、B5は持ちやすくコストも抑えやすい傾向があります。ページ数は面付(紙面の割り付け)の都合で16ページ単位が多く、64・80・96といった切りの良い構成にすると印刷効率が上がることがあります。本文カラーは写真中心ならフルカラー、文章中心ならモノクロ+口絵カラーという選択肢もあります。仮にB5/80ページ/フルカラー/500部の並製と、A4/64ページ/フルカラー/500部を比べると、紙の面積とインキ量の差から後者のほうが単価が上がりやすい一方、写真の見やすさは向上します。どこに価値を置くかで最適点は変わるため、目的に照らしたトレードオフを意識して決めます。

見積りの読み方と比較基準(総額と単価)

見積書は「内訳の粒度」と「前提条件」をそろえて比較します。内訳では、撮影(ロケ/ブツ撮り)、色補正、デザイン、DTP(版下作成)、校正回数、色校正(色の最終確認)の有無、印刷・製本仕様、梱包・配送、予備・破損時の補償、増刷単価、データ保管期間などを確認します。前提条件として、ページ数、部数、判型、用紙、綴じ、本文の色数、納期、支給データの状態(リネーム済み/未整理)を合わせないと、総額比較は意味を持ちにくいです。比較のコツは、①総額、②1部あたり単価、③1ページあたり単価、④校正1回あたりの追加費、の4視点で見ることです。さらに、撮影は1点あたりの所要時間(例:15~20分)や出張の有無、デザインは修正想定(例:初校+再校の2回)を把握すると、後からの追加費用を抑えやすくなります。複数社に依頼する場合は、共通の仕様書を用意し、差分はメモ化して条件付きで比較すると判断がぶれにくいです。

項目想定単価数量小計メモ
作品撮影(美術品)2,500円/点80点200,000円反射対策・簡易調整含む一例
データ整理(リネーム・台帳)500円/点80点40,000円作品No・作家名で統一
編集・デザイン3,000円/ページ64ページ192,000円目次・索引含む
校正対応20,000円/回2回40,000円初校・再校
印刷・製本(A4並製・フルカラー)800円/部500部400,000円用紙135kg想定
梱包・配送(2箇所)15,000円/箇所2箇所30,000円会場+保管先
参考合計902,000円仕様で増減します

作品データ準備と撮影・スキャンの費用設計

制作費を安定させるには、作品データの揃え方を早めに決めておくことが近道です。平面作品中心ならスキャン、絵肌や立体感を生かしたい作品や大型作品は撮影が候補になります。スケジュール面では、撮影場所の確保や移動があると1日あたりの処理点数に限界が出るため、事前の選抜と搬入動線の設計が効きます。データの受け渡しは、フォルダ構成とファイル名のルールを最初に共有すると後工程で迷いが減ります。たとえば「作品No_作家名_制作年.jpg」のように統一し、キャプションの原稿(作品名・素材・サイズ・制作年・撮影クレジット)はスプレッドシートで一覧化します。解像度(画像の細かさ)や色空間(色の表現範囲)は、印刷前提ならCMYK(印刷用の色の仕組み)、画面配布用ならRGB(画面用の色)を基本に、最終工程でどこで変換するかを決めておきます。バックアップは最低2系統(外付けとクラウドなど)を確保すると安心です。

撮影とスキャンの使い分け(解像度の目安やdpiの考え方)

平面でサイズが小さい作品はスキャン、絵肌や箔・光沢がある作品、立体や大判は撮影が向くことが多いです。解像度(画像の細かさ)は、印刷での再現に直結します。dpi(ドット密度)の考え方として、A4ページに写真をほぼ全面で載せる場合は300dpi程度が一般的な目安です。原稿が小さくトリミングして大きく使う場合は、元データの長辺が4,000px以上あると安心度が上がります。小さな作品を拡大掲載する場合や細密画は、600dpiでのスキャンも検討できます。撮影では、ホワイトバランス(色味の基準)をグレーカードで合わせ、偏光フィルター(反射を抑える道具)でテカリを軽減すると修正工数が減りやすいです。色空間はsRGB(汎用)で受け渡し、印刷直前にCMYKへ変換する運用が扱いやすいことが多いですが、印刷所の指定がある場合はICCプロファイル(色のルール)に合わせます。過度なシャープやノイズ除去は後工程で調整しづらいため、元データはできるだけ素直に残す方針が無難です。

データ整理とキャプション作成の工数見積り

データ整理は後回しにすると全体の手戻りを招きやすい工程です。ファイル名は「通し番号→作家名→年」の順で統一し、半角英数字で揺れをなくします。1点あたりの整備時間の目安は、リネーム・フォルダ振り分け・台帳入力・簡易レタッチを含めて2~5分です。たとえば80点なら160~400分(約3~7時間)で、担当者1名なら1~2日で消化できる計算になります。キャプションは、作品名/素材/サイズ(例:縦300mm×横420mm)/制作年/所蔵/撮影クレジットなどを揃え、表記ゆれを事前に統一します。入力はスプレッドシートにし、列を「掲載順」「通し番号」「作品名」「作家名」「素材」「サイズ」「制作年」「撮影者」「備考」としておくと、DTPへの受け渡しがスムーズです。校正段階での差し替えに備え、差分管理のルール(更新日・更新者を記録)も決めておくと安心です。

権利・同意・クレジットの基本

権利まわりは早めに方針を決め、制作途中での迷いを減らします。基本は、掲載同意書(掲載範囲・二次利用の有無・期間を記載)を作家や権利者から回収し、版面には著作権表示(©表記)とクレジット(撮影者・編集協力など)を適切に入れます。人物が写る場合は肖像権への配慮として、顔が判別できる写真の掲載可否を確認します。企業資料では、機密情報や個人情報(部署・連絡先・顔写真など)の扱いを社内規程に沿って整理し、公開範囲(会場配布のみ/オンライン公開可)を事前に決めます。ここでの記載は一般的な運用の目安であり、契約や法解釈が関わる場合は専門家の助言を検討してください。クレジット表記の順序や表現は、関係者間の合意を文書化しておくと後のトラブルを避けやすくなります。

デザイン・編集・校正の進め方と費用

編集とデザインは、企画の意図を紙面に翻訳する工程です。一般的には、構成案→ラフ(たたき台)→テンプレート作成→本文と画像の流し込み→初校(1回目の校正)→再校(2回目の校正)→入稿という順に進みます。費用は「ページ数」と「修正回数」「画像点数」に比例しやすく、修正が増えるほど編集・DTP(版下作成)の工数が膨らみます。開始時に、見出し階層・本文サイズ・キャプション体裁・色使いを固めてから量産に入ると、迷いが減ってコストも読みやすくなります。校正は誰が何をどの期日までに直すのかを明文化し、原稿差し替えは窓口を1名に絞ると、伝言ミスが減り追加費の発生も抑えやすいです。時間配分は、テンプレート確定までに全体の約30%、流し込みと初校までに約40%、再校から入稿準備に約30%という考え方が目安になります。

レイアウト設計と紙面設計の考え方

レイアウトは、グリッド(見えない区割り)と余白の設計が要になります。写真を主役にする図録では、1点を大きく見せるページと複数点を比較できるページを混在させ、視線の流れを意識すると読み心地が整います。文字設計はタイポグラフィ(文字の設計)の観点で、本文は可読性を優先し、キャプションは文字サイズをやや小さく、行間は本文より気持ち広めに取ると情報の層が分かりやすくなります。図版サイズは仕上がり解像度(画像の細かさ)に合わせ、トリミングの有無や余白の取り方を最初に決めておくと、後の差し替え時にも判断がぶれにくいです。索引や年表を入れる場合は、本文と独立したテンプレートを先に用意し、見出しレベルと参照ルール(例:作家名→作品No→ページ)を合わせると全体の統一感が出ます。

校正回数とスケジュール(初校・再校の目安)

校正回数は、初校→再校→念校(最終確認)という2~3回が一般的です。目安として、原稿と画像が揃ってから初校までが約5~10営業日、各回の赤字(修正指示)の取りまとめに約2~3日、再校の提示に約3~5営業日、念校と入稿準備に約2~3日を想定すると、全体で約2~3週間の幅になります。回数を増やすほど品質は安定しやすい一方、費用と納期が延びます。初校では誤字脱字・体裁・画像抜けの網羅確認、再校では表記ゆれやキャプションの整合、念校では数値や固有名詞の最終チェックといった役割分担を決めると効率的です。修正は「重要な内容修正」と「軽微な体裁調整」を分け、重要修正はまとめて指示、軽微なものは再校で一括反映する方針にすると、戻し回数を抑えやすいです。

PDF校正の注意点(ファイル形式と色管理)

PDF校正は、表示機器の違いで色や濃度の見え方が変わる前提で運用します。入稿形式は印刷向けのPDF/X(印刷用PDF規格)を基本に、画像は埋め込み、フォントは必要に応じてアウトライン化(文字を図形化)します。仕上がり位置を示すトンボ(裁ち位置の目印)と塗り足し(断裁誤差対策で周囲に色を伸ばすこと)は、上下左右に各3mmを確保するのが一般的です。色はRGB→CMYK変換(画面色→印刷色の変換)のタイミングとICCプロファイル(色のルール)をあらかじめ決め、濃度が落ちやすい暗部や肌色の再現を重点的に確認します。特色やメタリック表現は、プロセス4色では再現できない場合があるため、別途の加工や紙選択で代替する方針も検討します。最終PDFはファイル名・版数・出力日時を明示し、誤版混入を防ぎます。

印刷・製本・加工・配送の費用レンジ

印刷費は、部数・ページ数・色数・判型・紙の種類と厚み・製本方式・表紙加工・納期で大きく変動します。一般には、版代(初期準備費)が必要なオフセット印刷(大量向けの高画質印刷)は部数が増えるほど単価が下がり、オンデマンド印刷(少部数向けのデジタル印刷)は小ロットで有利です。製本は並製(ソフトカバー)と上製(ハードカバー)で価格差があり、上製は部材と工程が増えるぶんコストと納期が伸びます。表紙のPP貼り(保護フィルム)や箔押し(加飾)は見栄えと耐久性を上げますが、1箇所ごとの追加費が発生します。配送は箱数と配送先、時間帯指定の有無で変わるため、会場搬入の条件を先に確定しておくと見積りの精度が上がります。

紙と綴じで変わる価格と納期

紙は上質紙・マットコート・コートなどの種類と、90kg・110kg・135kgといった厚みで価格と見え方が変わります。写真重視ならマットコートやコートが発色とディテールの再現に有利、文字量が多い読み物中心なら上質紙で目の疲れを抑える選択もあります。綴じは、中綴じ(ホチキス留め)、無線綴じ(背を接着で固める方式)、PUR(強い接着剤を使う無線綴じ)、糸かがり(糸で綴じる方式)などがあり、耐久性と平開性が上がるほど費用は増える傾向です。背幅が増えるほど用紙と接着の管理がシビアになるため、80ページを超える場合は無線綴じ以上、保存性を重視する社史は糸かがりの検討が安心です。納期は加工が増えるほど長くなるため、表紙加工や上製本は通常より約3~7営業日ほど余裕を見ると安全です。

部数別の単価変動と刷り増しの考え方

単価は部数の増加に伴って逓減しますが、一定部数を超えると下がり幅は緩やかになります。例えばB5/64ページ/フルカラー/マットコート135kg/無線綴じの想定で、200部なら約1,100円/部、500部なら約700円/部、1,000部なら約520円/部という目安が考えられます(工程や時期で変動します)。増刷は、版やデータの保管条件が整っていれば初回より立ち上がりが速く、同等かやや低い単価で対応できる場合があります。売れ行きが読みづらいときは、初回を500部程度に抑え、在庫が残100部になった時点で増刷判断をするなど、トリガーを決めておくと資金計画が安定します。オンデマンド印刷は色の安定度や用紙制約がある一方、100~300部では総額が抑えやすく、試験販売に適しています。

梱包・配送・会場搬入の費用とリスク対策

完成後の費用も見落とさないようにします。箱詰めは1箱あたり約10~20部(判型とページ数で増減)を目安に、1箱の重量は約10~15kgとなることが多いです。会場搬入と保管先への2箇所配送では、地域や箱数にもよりますが1箇所あたり約10,000~20,000円の送料を見込むケースがあります。角つぶれ防止のコーナー材、シュリンク包装(簡易フィルム包装)で破損リスクを下げ、全体の5~10%を予備として確保しておくと当日の欠品を防ぎやすいです。納品希望日時は印刷所の出荷カレンダーと照合し、午前/午後の時間帯指定や館内搬入の動線確認(台車可否・エレベーターのサイズ)を事前に共有するとトラブルが減ります。個別発送が必要な場合は、宛名ラベルの形式や封入物の有無も先に決めると作業が滑らかです。

判型ページ数部数本文色用紙製本概算単価/部概算総額
B564200フルカラーマットコート110kg無線綴じ1,100円220,000円
B564500フルカラーマットコート135kg無線綴じ700円350,000円
A464500フルカラーマットコート135kg無線綴じ800円400,000円
A496500フルカラーマットコート135kgPUR1,050円525,000円
B5801,000フルカラーマットコート110kg無線綴じ520円520,000円
A464300モノクロ+口絵8ページカラー上質紙90kg中綴じ600円180,000円

※上記は一例の目安です。実際の単価は時期・紙需給・印刷所の条件・色校正や加工の有無で増減します。比較の際は、本文の色数・紙・製本・納期・配送条件を同一にそろえて判断します。

運用・在庫・再版とオンライン公開の対応

印刷が終わると制作は完了に見えますが、実際はここから「運用」の段階が始まります。会場配布・販売・寄贈・社内配布など用途ごとに出庫ペースが異なり、在庫切れや保管劣化、配送トラブルを避けるための仕組みづくりが重要です。さらに、制作データの保全とオンライン公開の設計は、再版や派生物(抜き刷り、PDF版、告知用画像)の効率を左右します。運用設計の基本は、①在庫水準の目安を数式で決める、②保管とバックアップ(予備策)のルールを決める、③PDF版・電子公開のポリシー(配布範囲・期間・ファイル仕様)を文書化する、④増刷や追補の判断基準と担当を明確にする、の順で考えることです。事前に合意をとった運用フローは、想定外の追加費を抑え、関係者の負担を軽くします。

在庫計画と保管(バックアップ含む)

在庫は「安全在庫(欠品を避ける最低数)」を決めると管理が安定します。目安として、直近の平均出庫数×1.2~1.5を安全在庫とし、残部が安全在庫を下回ったら増刷検討に入るトリガーを設定します。販売と寄贈の比率が高い時期(会期前後や年度末)は出庫が偏るため、月ごとの出庫予定表を作成し、箱単位での引き当て管理を行うと欠品が起こりにくくなります。保管は直射日光と湿気を避け、湿度40~60%程度を目安に安定させます。長期保管には中性紙の保存箱や角つぶれ防止材が有効で、積み重ね段数は箱の耐荷重を踏まえて少なめに抑えます。梱包は箱内の遊びを減らす緩衝材を入れ、納入時の検品記録(箱数・ダメージ有無・撮影)を残すと、破損対応がスムーズです。制作データは3-2-1バックアップ(3系統、2種類の媒体、1つは別拠点)を基本に、プロジェクト名・版数・日付の命名規則を統一します。編集用データと入稿用最終PDFは別フォルダで保管し、保管期間の目安を決めておくと再版や派生物の作成が短時間で行えます。

PDF版・電子公開の作り分けと配布ポリシー

紙と同時にPDF版を用意する場合は、用途別に仕様を分けるとトラブルを防げます。例として、画面閲覧用は150dpi・sRGB(画面用の色)・目標容量50MB以下・文字は埋め込み、印刷向けは300dpi・PDF/X(印刷用PDF規格)・塗り足し3mm・CMYK(印刷用の色)変換済みとします。配布ポリシーは、配布範囲(関係者のみ/購入者特典/一般公開)、有効期限(例:14日)、保護設定(パスワード、透かし)、再配布の可否、引用時のクレジット表記を文書化して共有します。社史や記念誌では機微情報の黒塗り版を別に用意し、外部公開時は個人名・連絡先・顔写真の扱いを再点検します。ファイル名は「冊子名_版数_公開区分_YYYYMMDD.pdf」の形式で統一し、目次のしおりや本文のメタデータ(タイトル・作者・キーワード)を整えると検索性が上がります。SNSやウェブで抜粋を載せる場合は、掲載範囲と解像度(画像の細かさ)の上限を決めておくと、意図しない二次利用を抑えられます。

再版・追補の段取りと費用の平準化

増刷(同一内容の再印刷)と再版・追補(内容を更新)は、意思決定の基準を先に決めておくと費用が平準化します。増刷は在庫が安全在庫を下回った時点で、需要見込みと単価の逓減効果を比較し、ロットを決定します。追補が必要な場合は、差分管理(更新点のリスト化)と版管理(版数・日付・修正担当の記録)を徹底し、本文は大幅改訂か差し替えページかを判断します。写真やキャプションの追加は、既存テンプレートに収まるかを先に確認するとDTP(版下作成)の工数を抑えられます。部数が少ない更新はオンデマンド印刷、まとまった需要がある改訂はオフセット印刷で単価を下げるなど、方式の使い分けも有効です。印刷所にはデータ保管期間と再出力条件を確認し、色基準(ICCプロファイル)の再現を優先するか、コストを優先するかの方針をあらかじめ共有します。表紙の版面や奥付は版数を更新し、誤配防止のため旧版の残部は扱いを明確にします。

運用に関する権利・個人情報・同意の説明は一般的な注意喚起にとどめています。具体的な契約や法的判断が必要な場合は、専門家への相談をご検討ください。

まとめ

図録の費用は、仕様決定→撮影・データ整備→編集・デザイン→校正→印刷・製本→配送→運用という一連の流れで積み上がります。運用段階では、在庫とデータを「数式とルール」で管理し、PDF版・電子公開の方針を文書化することで、増刷や追補の判断が素早くなります。費用面では、部数・判型・ページ数・紙・製本・納期の主要因を固定し、見積りの前提をそろえて比較する姿勢が重要です。撮影とスキャンの使い分け、解像度(画像の細かさ)や色の指定、校正回数の設計といった初期判断は、後半のコストと時間を大きく左右します。最後に、在庫・配送・オンライン公開まで視野に入れた運用設計をしておくと、会期や社内行事の締切に間に合いやすく、トラブル時の追加費も抑えられます。制作と運用をセットで考えることが、品質と予算の最適点に近づく近道です。

区分確認項目確認内容担当期日備考
権利・同意掲載同意掲載範囲・二次利用・期間・クレジットの合意書回収人物写真の可否も明記
データファイル仕様解像度・色空間・ファイル形式・命名規則・最終PDF/X3-2-1バックアップ方針
編集校正計画回数・担当・赤字締切・差し替え受付ルール重要修正と軽微修正の区分
印刷仕様確定判型・ページ数・紙・色・綴じ・加工・塗り足し3mm色校正の有無と費用
納期進行表初校・再校・念校・入稿・下版・出荷の各日程休日と繁忙期の考慮
配送納品条件箱数・配送先・時間指定・会場搬入の動線予備部数と破損時対応
在庫管理ルール安全在庫・増刷トリガー・台帳方式役割分担と棚卸頻度
公開PDF配布配布範囲・期限・保護設定・再配布ポリシー外部公開時の個人情報対策

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