作品集の英訳は全部必要? 読んでほしい内容から翻訳範囲を決める
作品集を日本語が読めない人へ渡すとき、何を英語にするか。作品情報、短い紹介、文章そのものの役割を分け、原稿ごとに翻訳する範囲と確認担当を考えます。
HUKUSYA / JOURNAL

日本語の作品説明や紹介文は用意できた。作品集を日本語が読めない友人にも渡したいけれど、英語はどこまで付ければよいのでしょうか。
まず考えたいのは、その人に何を読んでほしいかです。作品の基本情報を確認してほしいのか、見どころや冊子の趣旨を伝えたいのか、それとも作者の文章そのものを届けたいのか。英訳を依頼する前に、原稿ごとに役割と翻訳する範囲を分けてみます。
何を読んでほしいかで、翻訳へ出す原稿を選ぶ
作品の基本情報を確かめてほしい
画像を中心に見てもらい、作品を見分けるための情報を添えたい場合は、作品名など、載せる項目を先に整理します。どの項目に英語が必要かを選び、原題を残す場合や、すでに採用している表記がある場合は、その情報も伝えます。
見どころや、一冊の趣旨を知ってほしい
長い原文とは別に、短い紹介用の原稿を用意してから訳す案があります。誰へ何を伝える紹介なのかを決め、日本語で内容をまとめます。原文から省くことと、必ず残したいことを確認したうえで、翻訳の対象にします。
文章そのものを読んでほしい
制作について書いた文章や寄稿文の言葉を、その流れごと届けたい場合は、その文章全体を翻訳する範囲として相談します。短く紹介するだけでは残らない内容があるかを考え、予算だけを理由に本文を機械的に削らないようにします。
一冊のすべてを同じ範囲にそろえる必要はありません。作品情報は項目を選び、紹介文は短くまとめ、寄稿文は全文を対象にするなど、原稿の役割に合わせて組み合わせることも考えられます。今回は訳さない原稿があれば、その範囲も分かるようにします。
英文要旨を加える例と、日英併記の刊行例がある
田原本町の刊行物案内では、『唐古・鍵考古学ミュージアム 展示図録(2018年版)』を、2020年に英文要旨を付けて再版したと説明しています。英文の要旨を加える刊行例として参照できます。参考資料
美術出版社の山口歴作品集『OUT OF BOUNDS』の内容紹介には、日英併記と記載されています。作品集に二つの言語を載せる刊行例です。参考資料
ここで確認したのは、それぞれの公式な刊行説明です。図録や作品集の全ページを読んで、翻訳の範囲や品質、読者の理解を比較したものではありません。どちらの形が向くかは、自分の原稿で届けたい内容から考えます。
全文を訳す原稿と、紹介用にまとめる原稿を分ける
「窓辺」の画像と、絵の構図や見返す順番を案内する日本語文を使い、翻訳へ出す前の二つの原稿案を示します。英訳の出来を比べる例ではなく、訳す対象を選ぶための編集例です。

三文をそのまま翻訳の対象にする案
右側に窓があり、床には四角い明るい部分が見えます。左端には椅子の一部が入っています。最初に絵の全体を見て、次に窓と床の関係を見返してみてください。
この原稿には、構図の説明に加え、絵を見返す順番の案内があります。その案内も含めて読んでもらいたいなら、三文すべてを翻訳の対象として渡します。
構図を紹介する一文を、別に用意する案
右に窓、左端に椅子があり、床に四角い明るい部分が見えます。
こちらは構図の三つの要素を、一文で紹介するためにまとめた別原稿です。見る順番の案内は含めていません。これを訳した文章を、元の三文すべてを訳したものとして扱うことはできません。
両方とも、構図を説明するための編集文です。作者の発言や制作意図として引用したものではありません。実際の原稿でも、紹介用にまとめてよい範囲と、全文で残したい表現を、原稿の確認担当者と確かめます。
原稿の編集、翻訳、訳文の確認を分けて相談する
短い紹介文を作ることと、その文章を英語にすることは、別の仕事です。紹介用に内容をまとめる段階では、何を残すかを確認します。翻訳する段階では、その確定した日本語と必要な作品情報を渡し、実際の訳文を誰が確認するかを決めます。
用意済みの英語表記や訳文がある場合も、どこまで確認を終えているかを伝えます。原文を直した後に、以前の訳文がそのまま対応するとは限りません。翻訳と紙面づくりをどこへ依頼する場合も、原稿の版と確認担当をそろえておきます。
短くしたから必ず安く、早く、よく伝わるということではありません。全文を届けたい文章と、紹介用に編集する文章を分け、その作業範囲と費用を個別に確かめます。
日本語原稿と、届けたい相手から作品集を考える
複写 HUKUSYAの作品集・カタログ・Web制作では、手元の画像と原稿から、掲載内容や説明文、構成、紙面について相談できます。日本語原稿の一覧、渡す相手の言語、全文で届けたい文章、用意済みの訳文と確認状況をお知らせください。
どの原稿を載せ、どこまで編集・デザインを依頼するかを伺います。翻訳や専門校正が必要な場合は、その対応可否、担当、費用を別に確認します。
「一冊全部に英語を付けるか」で迷ったら、まず一つの原稿から、相手に読んでほしい内容を選んでみてください。翻訳へ渡す前の整理が、作品集の依頼範囲を伝える材料になります。
参考資料
- 田原本町:展示図録 — 2020年に英文要旨を付けて再版した刊行説明を参照。
- 美術出版社:山口歴作品集「OUT OF BOUNDS」 — 公式な内容紹介における日英併記の記載を参照。



