環境に配慮した冊子を作る前に――用紙・部数・表示の希望を分けて相談する
自作の発注希望書から、組織の調達条件、A5・24ページ・100部という仕様の案、認証などの表示確認を整理します。紙の見た目と環境上の主張を分け、制作担当へ伝える項目を考えます。
HUKUSYA / JOURNAL

環境に配慮した冊子を作りたいとき、用紙の色や手触りだけで選ぶ前に、組織として求める条件を確かめましょう。再生紙を候補にすること、必要な部数を決めること、認証などの表示を載せることを、それぞれ確認できる形に分けます。
ここでは、自作の発注希望書を使って、制作担当へ伝える内容を整理します。特定の用紙や印刷先の認証対応を確認した見本ではありません。表示の可否を確認する前に、マーク付きの完成品として仕上げない案です。
最初に、組織が求める条件を確かめる
「環境に配慮したい」が、再生紙を使いたいという希望なのか、組織の調達基準を満たす必要があるのか、外部へ説明する表示も必要なのかを分けます。基準や指定がある場合は、その文書と、確認する担当者を制作側へ伝えます。
JAGATの解説では、用紙・インキ・加工製本材料や印刷工程を含むサプライチェーンで、省資源などの対応が求められる場合があると説明されています。[1] 用紙だけで今回の条件を全て確認した扱いにせず、どの資材や工程が対象かを相談しましょう。
A5・24ページ・100部を希望する発注書の案
次は、この案のために書いた発注希望です。実在する組織の注文や承認済みの仕様ではなく、何を希望し、何をまだ確認するかを伝えるための文章です。
発注希望書の案
用途は作品と活動を紹介する冊子。A5・24ページ・中綴じを希望。配布用80部、予備10部、保存10部の計100部を案とする。用紙は再生紙を候補にし、求める古紙配合率と認証条件は組織内で確認してから伝える。認証等の表示は、対応可否と必要な確認が取れるまで入れない。
100部は、配布・予備・保存の内訳を足した、この案での希望数です。印刷方法ごとの最少部数や、在庫・納期・予算、必要な調達条件に対応できることを確認した数字ではありません。
| 分けるもの | 希望と確認すること |
|---|---|
| 組織の調達条件 | 再生紙を候補にする。必要な古紙配合率、認証や提出資料の条件は組織内で確認し、基準の文書と確認担当者を伝える。この案では条件を確定しない。 |
| 冊子の仕様と部数 | A5・24ページ・中綴じ、配布80部・予備10部・保存10部の計100部を希望する案。用紙、印刷方法、予算、納期と合わせて、対応できる範囲を制作担当へ確認する。 |
| 認証などの表示 | 用紙と印刷先を決める際に、今回の冊子へ何を表示できるか、どんな確認が必要かを印刷担当へ尋ねる。確認前はマークや認証済みとの表現を原稿へ入れない。 |
このように書いておくと、紙の候補が決まっても表示の確認は残っている、部数は決まっても予算の照合はまだ、という状態が伝わります。全てを「対応済み」の一言へまとめないための希望書です。
再生紙の希望を、見た目だけで伝えない
紙の白さや繊維の見え方は、冊子の印象を相談する手がかりになります。一方、今回必要な原料や配合、認証の条件を確認した記録とは分けて扱います。希望する質感と、満たしたい調達条件を、それぞれ言葉にしましょう。
A5の案なら、作品画像を載せるページと、文章中心のページで気になる点も伝えます。画像の見え方、裏側の透け、紙の厚み、持ったときの重さなど、重視する項目を選び、確認方法を制作担当と決めます。まだ見ていない紙の印刷結果や、色の正確さを断定する必要はありません。
候補の用紙が希望条件に合うかは、製品名や確認に使う資料をそろえて相談します。条件を満たすことの確認と、見本で見た目を選ぶ作業を、別の確認として残します。
認証された紙と、冊子に付ける表示を別に確認する
FSCの案内では、認証取得組織の全ての製品が認証範囲に含まれるとは限らず、登録された範囲と認証された管理体制で扱われる製品にラベルを付けられると説明されています。[2] 会社名や紙の候補だけから、今回の冊子にも表示できると決めないようにします。
発注希望書では、「この冊子で表示を希望する」と伝えたうえで、印刷担当へ対象の用紙・製品と必要な確認を尋ねます。対応の可否、表示する内容、誰が何を確認するかが分かってから、実際の原稿へ反映する順にします。
この案には、認証マークや認証番号を置きません。未確認の番号を入れたり、別の製品の表示を写したりせず、表示が必要な場合の作業と費用も含めて相談します。特定認証を使えることを、冊子制作の標準対応として約束するものではありません。
配る分、予備、保存する分から部数を考える
この案の100部は、配布80部、予備10部、保存10部に分けています。実際には、届ける先と一か所あたりの必要数を確認し、追加配布の予定や残部の置き場所も考えます。
少ない部数にすれば、必ず今回の環境上の条件を満たすと判断するのではなく、必要数と制作条件を合わせて相談します。増刷する可能性があるなら、元のデータや用紙をどう扱うか、追加制作の可否・費用と併せて確認しましょう。
部数を決めたあとに配布方法が変わった場合は、希望書の内訳も更新します。誰がどの数字を確認したかを記録し、過去の見積もりや承認と取り違えないようにします。
確かめていない削減量は、冊子の説明に加えない
この案では、排出量や資源使用量を測っていません。そのため、「何%削減した」「環境負荷をゼロにした」といった結果は原稿へ入れません。紙の色や部数の少なさから、効果の数字を作らない方針です。
環境への取り組みを冊子で説明したいときは、組織側が確認した取り組みの内容と根拠を用意し、どの範囲の説明を掲載するかを決めます。制作側が確認できる仕様と、組織として責任を持って説明する内容を対応させ、確認する方を決めてから原稿にします。
発注希望と未確認の条件を、制作担当へ渡す
複写 HUKUSYAの作品集・冊子制作では、用途と掲載内容、用紙や印刷方法などの希望をもとに相談できます。組織の調達条件がある場合は、基準の文書、必要な提出資料、表示の希望と確認担当者をお知らせください。
用紙・印刷先・表示への対応可否、必要な確認作業と費用を個別に確認します。特定認証への対応や、測っていない環境効果を保証する案内にはせず、希望する仕様と確認が残る条件をそろえて進めましょう。
参考資料
- [1] JAGAT「社会課題と印刷」(環境視点のサプライチェーンマネジメントの説明)
- [2] FSCジャパン「FSC認証について」(認証範囲と認証製品へのラベル表示の説明)



