作品や手紙を生成AIに渡す前に――入力する範囲と、人が確認する仕事を決める
原稿全体を渡す前に、必要な作業と入力する資料の範囲を決めましょう。個人情報を含まない自作文の入力例から、保留する資料、利用条件、人が行う原文照合と掲載判断を考えます。
HUKUSYA / JOURNAL

作品や家族の手紙を冊子にまとめるとき、生成AIで見出し案を出したり、文章を整理したりしたいと考えることがあります。使う前に、何のために、どの資料を、どの範囲まで入力するかを決めましょう。
資料の権利や私的な情報、利用先の保存・学習などの条件を確認し、渡さない資料と、人が担当する仕事も選びます。返ってきた文章を、元の資料と照らして確かめる作業は別に残します。
原稿全体を渡す前に、頼みたい仕事を一つ決める
「この原稿をよくしてほしい」だけでは、何を変えるかが広くなります。見出しの候補を出す、段落の順番を考える、重複している説明を探すなど、今回ほしい案を先に決めます。
その作業に、作品画像や手紙の全文が必要かも考えます。見出しの候補だけなら、対象にする短い本文だけを選ぶ方法があります。名前や住所を取り除くだけで、どの資料でも入力してよいと決めるのではなく、内容や権利、利用先の条件を合わせて確かめます。
自作文二段落だけを、見出しづくりへ渡す案
ここでは、この案のために書いた短文を使います。人名・住所・連絡先や、実際の家族の手紙・未公開作品は含めていません。本文候補二段落を見出しづくりの入力範囲にし、構成や掲載範囲を決める編集メモは渡さない案にします。
依頼文と入力本文の案
次の二段落だけを対象に、内容を増やさず、見出しの候補を三つ挙げてください。人名・地名・日付、作者の気持ちや背景は加えないでください。本文に書かれていないことを、事実として補わないでください。
小さな紙の箱を三つ並べた。高さをそろえると、上の面の違いが見えた。
一つだけ向きを変えた。横の面が見え、折り目の線が表に出た。
入力に含めない編集メモは、「作品を並べる順番と、掲載の範囲は、原稿を確認する方と決める。」です。このメモは、誰が構成と掲載を確認するかを決めるために手元へ残します。
この入力例は、頼む作業と本文の範囲を示すものです。特定のサービスで実行した結果や、私的な資料を入力しても問題ないと確認した記録ではありません。利用先を決めるときは、実際の契約・設定と入力条件を確認します。
入力候補、保留する資料、人が扱う仕事を分ける
| 分けるもの | この案での扱い |
|---|---|
| 入力候補にする本文 | 自作文の二段落だけを候補にし、見出しを三つ挙げる作業へ絞る。本文にない人名・日付、作者の気持ちや背景を足す依頼にはしない。 |
| 入力前に保留する資料 | 家族の手紙、作品画像、未公開原稿は別に扱う。権利や私的情報、入力してよい範囲と利用先の条件を確認できるまで、入力対象から外す。 |
| 人が担当する仕事 | 原文との照合、事実と出所の確認、構成と掲載範囲の判断、最終原稿の確認。編集メモは手元へ残し、返った案をそのまま決定稿にしない。 |
この案なら、生成AIを使わずに、編集者が二段落を読んで見出しを考える方法も選べます。使うことを前提に資料を集め直すのではなく、任せたい作業と、資料を渡せる範囲から決めます。
利用先の保存・学習などの条件を確かめる
個人情報保護委員会の注意喚起では、一般の利用者について、入力情報が機械学習などに利用される場合のリスクや、応答に不正確な内容が含まれるリスクが示されています。利用規約やプライバシーポリシー等を確認し、入力する情報を踏まえて判断するよう案内されています。[1]
利用する前には、そのときのサービスと契約・設定に合わせて、次のような点を確かめます。
- 入力した本文や画像が、どの目的で使われ、保存されるか。
- 学習など、今回の応答を返す以外の目的に使われる条件があるか。
- 共有、閲覧できる人、履歴や削除の扱いをどう確認できるか。
- 他者の作品や未公開情報について、入力と出力の利用にどんな条件があるか。
サービス名が同じでも、使う契約や設定まで同じとは限りません。条件が確認できない資料は入力対象から外すなど、今回の扱いを決めておきます。特定の製品の機密性や、全ての入力情報の扱いを一律に保証する案内にはしません。
手紙や作品の権利と、入力の目的を確認する
手元にある資料でも、他の方が書いた文章や写した写真、家族の私的なやり取りが含まれることがあります。誰のどの資料を、何のために外部へ渡すのかを整理し、入力に関する確認と、完成した冊子へ載せる範囲の確認を分けます。
文化庁の一般利用者向けチェックリストでは、サービスの利用規約に、他人の著作物の入力などを禁止・制限するルールがある場合の確認が示されています。また、生成することと、生成物をその後に利用することでは、確認すべき点が異なり得ることも説明されています。[2] サービスを利用できることだけで、資料の入力や冊子への掲載まで確認済みとしないようにします。
この二段落の入力例を、実際の手紙や未公開原稿へそのまま広げることはできません。確認する方、入力から外す箇所、必要なら人が原文を読む範囲を、案件ごとに決めます。
返ってきた文章は、原文と照らして採否を決める
この自作文の案なら、三つの箱という数、向きを変えたこと、横の面と折り目が見えたという関係が、原文にある内容です。見出し案に、書いていない場所や出来事、作者の気持ちが加わっていないかを、人が確かめます。
自然な文章になっていても、元の資料に書かれていた事実と同じとは限りません。[1] 原文と生成された案を分けて残し、実際に採用する言葉と、直す言葉を決めます。本人の発言や気持ち、家族の記憶を、文章を整えるために補ってしまわないようにします。
作品や当時の場面を画像で補う場合も、想像して作った画像と、実際の作品・記録写真の役割を分けて考えます。原資料にない画像を、当時撮られた写真や本人の作品として掲載する扱いにはしません。
依頼する前に、利用する作業と除外資料を伝える
複写 HUKUSYAへ原稿整理や編集を相談するときは、生成AIの利用についての希望、外部へ渡せない資料、本人や提供者の確認が必要な資料をお知らせください。入力する目的と範囲、人が担当する照合や事実確認、最終原稿を確認する方を整理します。
画像・原稿からの冊子制作案内から、構成・編集・デザインを相談できます。AI利用を必須にせず、使う作業と使わない作業、実際の利用条件と担当範囲・費用を個別に確認します。
参考資料
- [1] 個人情報保護委員会「生成AIサービスの利用に関する注意喚起等」(2023年6月2日、一般の利用者における留意点、2~3頁)
- [2] 文化庁「AIと著作権に関するチェックリスト&ガイダンス」(2024年7月31日、一般利用者向け24・26頁の利用規約と生成物の利用に関する説明)



