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創業者の手書きノートを社史に使う

創業者の手書きノートを社史に載せるとき、短い引用だけでは文脈が抜けます。ノート全頁と引用三文、編纂担当の解説を分けた見開きから、原文を使う方法を考えます。

創業者の手書きノートを社史に使うという見出しと、使い方の説明のノート27頁。HUKUSYA / JOURNAL

周年冊子の編集を任され、会社に残る創業者の手書きノートから、歩みを伝える言葉を選びたい。一文を大きく載せれば印象に残りそうですが、その前後には、当時の困りごとや、これから試そうとしたことも書かれているかもしれません。原文を選ぶことと、その言葉を今どう説明するかを分けると、短い引用にも文脈を残せます。

この案では、見出しが「使い方の説明」のノート27頁を、創業期の資料として社史に載せる紙面を考えます。頁全体と引用する三文を見比べ、現在の編纂担当による解説を添えた見開きにしました。実施結果や年代は、この頁にない情報を補って決めません。

一文の前に、ノートの一頁を読む

ノートには、次の五行があります。頁番号は27で、日付は記されていません。

使い方の説明と題したノート27頁。注文が増えると店での説明が短くなること、道具の使い方を伝えたいこと、来月説明紙を作って店で渡し役立つか聞くことの五行がある。日付の記載はない。
ノート27頁の全体。見出し、前後の文、頁番号を一緒に残します。

注文が増えると、
店での説明が短くなってしまう。
道具の使い方も伝えたい。
来月、短い説明紙を作ってみる。
店で渡して、役立つか聞く。

「道具の使い方も伝えたい。」だけを抜き出すと、ものを渡すだけではない姿勢を読むことはできます。ただ、前二行には、注文が増えると店での説明が短くなってしまうという困りごとがあります。続く文まで読むと、説明紙を作り、店で渡して反応を聞こうとする具体的な予定が見えてきます。

この頁にあるのは「作ってみる」「聞く」という言葉です。説明紙を実際に配布したことや、その結果までは書かれていません。また、日付がないため、「来月」が何年何月なのかも特定できません。一頁を読んで分かる範囲を、まず短く押さえます。

引用した三文と、編纂担当の解説を分ける

見開きの見出しは「使い方を伝えるために」。ノート全頁を載せる面と、引用・解説を読む面を組み合わせています。引用は第三〜第五行の三文を、語句と句読点を変えずに使いました。

使い方を伝えるためにと題した社史の紙面。ノート27頁の全体と、第三〜第五行の引用、編纂担当の解説を別々に載せ、日付・実施・反応はこの頁から確認できないと記している。
原頁、引用三文、現在の解説を読み分ける見開き。縦画面の配置を開く。

道具の使い方も伝えたい。
来月、短い説明紙を作ってみる。
店で渡して、役立つか聞く。

その下には「編纂担当の解説」という見出しを置き、次の文章を添えました。

注文が増え、店で説明する時間が短くなる。ノートの前二行には、その困りごとが記されている。

続く三文では、道具の使い方を伝えるため、短い説明紙を作り、店で渡して役立つか聞く予定を書いている。

この頁から分かるのは、試してみようとしたことまで。実施や反応は記されていない。日付もなく、「来月」がいつを指すかは特定できない。

引用は創業者の言葉として読む場所、解説は現在の担当者がこの頁をどう読んだかを示す場所です。「翌月から配布した」「創業以来の方針だった」と書けば、原頁にはない話が加わります。別の資料で確かめられたことを補足する場合も、その出典を添え、ノートの記載と区別します。

原頁の下には「創業期のノート 27頁」「この頁に日付の記載なし」と置いています。「創業期のノート」はこの案の資料名で、年代を確定する根拠ではありません。元の頁を見返せることと、分からない日付を分からないまま示すことを、紙面でも残しました。

実物では、筆記者・前後の頁・掲載先を確かめる

会社に保管されているノートを使うときは、誰が書いたと判断したのか、何を根拠に年代を付けたのかを確かめます。保管袋の文字、他の頁の署名や日付、別の記録など、参照した情報の出所も残します。保管場所と筆記者の根拠は、別の情報です。

引用する文の元ファイルと頁番号を記録し、前後の頁も読んでおきます。途中から始まる文章や続きのある記述なら、そこを読まずに意味を決めないようにします。読めない文字を現代文へ置き換える場合は、原文の引用と、担当者が整えた文章を同じ表記にしません。

複数の情報源を記録・管理・照合する考え方は、Collections Trustの資料整理の説明も参考になります。ここでは社史編集の参考として用い、日本企業に共通する義務や、唯一の編集規格として扱いません。[3]

使う頁が決まったら、資料・文章・画像をどこまで掲載できるか、社内で誰が確認するかを整理します。社内だけで配る冊子と、誰でも見られるWebでは、読者と公開範囲が変わります。取引先や個人の情報、非公開の記載、資料の利用条件も含め、原頁を持っていることだけで掲載可否を決めないようにします。[1]

ノートのデータ化と、周年冊子の紙面を相談する

手書きの原頁を画像として残すことと、引用や解説を選んで冊子へ載せることには、それぞれ準備が必要です。元のノート、使いたい頁、確定した原文、現在の担当者が書く解説を分けて揃えると、原資料と完成紙面の対応を確認しやすくなります。

複写の企業資料のデータ化では、原本の状態や受け渡し、機密と公開範囲、撮影・データ化と追加制作の範囲を事前に確認します。周年冊子へまとめる際は、冊子の構成・レイアウトについて、掲載資料と説明文、見せる相手、紙面で伝えたいことをご相談いただけます。[1][2]

筆記者・年代・引用を確定するための社内確認は、制作相談の前に進めておくと掲載内容を決めやすくなります。原稿作成や取材・校正も必要なら、依頼する範囲を見積もり時に確認します。原頁と引用、担当者の解説を一緒に見ながら、社史の中で何を伝える頁にするかを考えます。

ノートのデータ化と、周年冊子の紙面を相談する →

参考資料

  1. 複写「企業資料のデジタル化と広報・社内共有への活用」。記録文書のデータ化、機密・公開範囲、社内確認者、撮影と追加制作の範囲を参照。
  2. 複写「作品集・カタログ・Webサイトの制作」。掲載資料と説明、構成・レイアウト、原稿作成等の範囲を確認する案内を参照。
  3. Collections Trust「Cataloguing」。英国博物館向けの資料整理手順で、複数の情報源を管理・照合する考え方を参考にした。
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