教室の教材に使う前に――市販の手本・図版を複写する範囲と条件を整理する
授業に使うという理由だけで、市販の手本や図版の複写を決めないようにしましょう。自作の葉の手本と利用目的表の案から、教室の性質、配布・送信の範囲、確認中の素材を分け、撮影や教材の編集を相談する準備を考えます。
HUKUSYA / JOURNAL

絵画や書道の教室で、市販の手本や図版を受講者へ配りたいときは、「授業に使うから」という理由だけで複写を決めないようにしましょう。教室の性質、使う作品、紙で配るのかデータを送るのかを整理してから、利用できる範囲を確かめます。
ここでは、自作した葉の線画と、利用目的を分ける表の案を使います。説明のために市販の手本や美術図版を複製したものではありません。実際の教室や権利者への相談・許諾を済ませた記録でもありません。
教室の授業であることと、制度の対象であることを分ける
文化庁の令和8年度版『著作権テキスト』は、学校などの教育機関で授業に必要な利用をする例外について、営利を目的としない教育機関であることなど、複数の条件を示しています。授業で使うという目的だけで、全ての個人教室へ同じ例外を当てはめることはできません。[1]文化庁『著作権テキスト』令和8年度版・本文78頁
まず、自分の教室の運営形態と、誰がどの授業で使うのかを整理します。対象となる教育機関に当たるか、今回の利用が条件を満たすかに迷う場合は、その情報をそろえて制度の案内や専門家へ確認してください。教室の呼び名や、授業料の有無だけでここで個別の適用を断定するものではありません。
使いたい素材と、渡し方を一緒に書き出す
素材の名前だけでは、利用の範囲は決まりません。書籍なら書名・著者・出版社・該当する頁、画像なら提供元や利用条件を確認できる場所を控えます。そのうえで、必要な箇所、配る相手と部数、使う期間、紙かデータかを並べます。
「受講者へ紙を配る」「受講者へデータを送る」「教室のWebサイトで誰にでも見せる」は、同じ使い方としてまとめないようにします。冊子とWebの両方に使いたい場合も、それぞれの目的と範囲を確認する準備にします。
自分で用意した手本から、使う素材を選ぶ
自作した、三枚の葉を置く手本
茎の線を一本引き、左右に葉を三枚置く。葉の形と間隔は自由に変える。
この線画と短文は、今回の説明のために自作しました。市販の手本をなぞったものや、第三者の図版を貼り込んだものではありません。実際の受講者が制作した作品や、指導の効果を示すものでもありません。
教材を準備するときは、まず自分で用意できる手本と原稿を選ぶ方法があります。他の方の作品を参考にして描いたり、写真や図版を組み込んだりする場合は、自作と呼ぶだけで確認を終えず、その部分の出所と使える条件も確かめます。
素材ごとに、制作へ渡せるものと確認中のものを分ける
次の表は、使い方を整理するための計画の案です。人数や部数も例として置いたもので、実際の教室の配布実績や許諾の内容ではありません。
| 素材と使い方の案 | 制作前に確かめること |
|---|---|
| 今回の自作の葉の手本を、受講者10人へ紙10枚で配る案。 | 使う線画と原稿の版、配布する相手と部数を決める。他の方の素材を追加する場合は、その部分を分けて確認する。 |
| 利用条件を確認する図版を、教材冊子20部へ1点載せる案。 | 提供元、冊子への掲載・配布を含む条件、必要な出所表記を確認する。対象の図版と条件は、まだ決まっていない。 |
| 市販の手本の一部を、受講者分の紙へ複写することを検討する案。 | 書名と該当箇所、使う相手・部数と方法を整理する。許諾や例外の適用は未確認なので、印刷対象へ入れる前に確かめる。 |
二つ目と三つ目の実物画像は、ここでは使っていません。確認中の素材を、取得済みの画像や使用可能な資料として制作側へ渡さないようにします。条件が確認できた素材だけを、掲載する版と結び付けて管理する案です。
必要な部分や部数でも、購入の代わりにならないか確かめる
SARTRASのFAQは、授業に必要な部分や部数の範囲であることに加え、権利者の利益を不当に害する利用は制度の対象外と説明しています。受講者の購入を想定するドリルやワークブックを、購入の代わりとして複写・送信する例も挙げています。市販の手本だから何枚までよい、と独自の上限を決めないようにしましょう。[2]SARTRAS「よくあるご質問」
同FAQでは、誰でも見られるWebサイトなどでの公開も、この制度の対象外としています。教室内で使う資料を、そのまま教室紹介のWebへ載せる場合は、掲載先を加えた利用としてあらためて確認します。必要な場合は、制度の確認と権利者への許諾相談を進めます。
確認を頼むときは、資料と利用の説明をまとめる
個別の利用について相談する場合は、使いたい部分を特定し、次の項目を説明できるようにします。
- 教室の運営形態、授業の内容と、使う方。
- 書名・著者・出版社・頁、または図版の提供元。
- 必要な箇所と使い道、配る人数・部数と使用期間。
- 紙の複写・冊子掲載・データ送信・Web公開のそれぞれの予定。
- 確認した利用条件、相談先と回答、まだ決まっていないこと。
利用条件がはっきりしている図版でも、今回の冊子や配布方法まで含まれるかを見ます。条件の文面と確認した日を残し、出所の表記だけで全ての利用が認められたことにはしないようにします。条件に合わない場合や判断が難しい場合は、素材を替えるか、必要な許諾や専門家への確認を進めてから制作範囲を決めます。
使う素材と範囲をそろえて、撮影・編集を相談する
複写 HUKUSYAの教室・展示会向け相談では、手元の作品の撮影・データ化と、その画像を使った冊子などの制作を相談できます。自作の手本や用意済みの画像、原稿から教材へまとめたい場合は、対応できる範囲と必要な資料、費用を個別に確認してください。
相談時には、使えると確認した素材と、まだ確認中の素材を分けてお知らせください。複写・編集の依頼が、個別の利用の適法性の判断や、権利者からの許諾取得まで含むとは限りません。内容を確認する方と、制作を進める方の範囲を決め、条件がそろった素材から着手しましょう。



