地域調査の図に添える幅を、推定値と凡例で伝える
図に添える幅を、観測値の最小・最大と取り違えないために。推定値・上下限・範囲の種類を同じ原表から取り、近くの凡例と掲載文へ残す一頁を紹介します。
HUKUSYA / JOURNAL

地域の記念誌に、調査担当から受け取った推定値の図を載せる。点の左右に伸びる幅を見て、「回答が最も小さい人から、最も大きい人まで」と説明したくなるかもしれません。ただ、その幅が何を示すかは、形だけでは決まりません。
まず、推定値・下限・上限と、範囲の種類を原表で確認します。その定義が分かるなら、点と淡い帯、近くの凡例を一組で載せます。分からない幅を図へ補わず、原表と数値の確認担当者へ戻る。この順序を守ると、図の見た目に合わせて資料の意味を書き換えずに済みます。
「幅」の名前を、原表で確かめる
同じ横線や帯でも、観測した最小・最大を表す場合と、推定の不確かさを表す場合があります。「上下に二つの値がある」という理由で、同じ意味の図にしてよいとは限りません。
元資料に「95%信頼区間」とあれば、その名称を凡例へ残し、推定の不確かさを示す幅であることを短く添えます。観測値の最小・最大と説明するには、それを示す別の資料が必要です。用語だけが届き、何の推定値なのか、単位は何か、誰が値を確定したのか分からない場合は、図を完成させる前に確認します。
英国の統計機関ONSの表示ガイドも、推定の範囲を表す二つの値を扱い、中心の推定値に淡い範囲を添える見せ方と、凡例や注記による説明を案内しています[1]。すべての図に幅を付けるための指示ではなく、読むうえでその範囲が必要かを考えるための参考です。
推定値と上下限を、同じ行から移す
この案では、施設を利用したと回答した人の割合の推定値を、三項目で紹介します。項目Aの推定値は30%、下限は24%、上限は36%。点を30の位置に置き、24から36まで淡い帯を引きます。帯の真ん中に点を自動で置くのではなく、原表の推定値を使います。
項目Bは42%、下限31%、上限53%。項目Cは50%、下限45%、上限55%です。三つの行を同じ0〜60%の目盛りで並べ、項目名と推定値、帯の両端を照合します。点が別の項目の帯と組み合わされていないか、凡例に書いた範囲の種類が全行に対応しているかも確かめます。

| 項目 | 推定値 | 下限 | 上限 | 範囲の種類 |
|---|---|---|---|---|
| 項目A | 30 | 24 | 36 | 95%信頼区間 |
| 項目B | 42 | 31 | 53 | 95%信頼区間 |
| 項目C | 50 | 45 | 55 | 95%信頼区間 |
図と表は、同じ項目の同じ数値へ戻れるよう、続けて掲載します。図で全体を見たあとに、原表で下限・上限と範囲の種類を確かめられる順番です。
凡例を読んでから、点と帯へ戻れる配置にする
この図では、濃い点を「推定値」、淡い帯を「95%信頼区間」として、図の上部へ並べました。「推定の不確かさを示す幅」という一文も、帯の説明の近くに置きます。誌面の離れた脚注へ意味を追い出すと、読者は帯だけを先に見て、自分の知っている別の範囲として読むかもしれません。
掲載文は、例えば次のように組めます。
濃い点は、施設を利用したと回答した人の割合の推定値です。淡い帯は95%信頼区間で、推定の不確かさを示す幅です。観測値の最小・最大を示すものではありません。
名称を省いて「ばらつき」とだけ書くと、個々の回答が広がる範囲なのか、推定値に付く幅なのかが曖昧になります。専門語を増やすのではなく、原資料の名称と、今回の図でそれが指すものを近くに残します。
点・帯・凡例・原表を一頁で見る(PDF)と、図の意味を説明する位置と、数値へ戻る位置をまとめて見られます。冊子の掲載寸法が決まったら、その大きさで項目名と帯の説明を読み、必要に応じて余白と文字の大きさを調整します。
定義が分からないときは、図を足す前に戻る
原表に推定値と上下限だけがあり、範囲の種類が書かれていないときは、「信頼区間だろう」と補いません。「下限」「上限」という名前だけで、観測した最小・最大と判断することも避けます。資料の確認担当者に、その二値の意味、計算の対象と単位、掲載する説明文を確かめます。
確認が済むまでは、元資料にある項目名と数値を、その名称のまま表で示す案を検討できます。ただし、表へ移せば不明点が消えるわけではありません。説明できない範囲を表の下限・上限欄へ転記して公開する前にも、定義と掲載可否の確認が必要です。中心値だけを載せる場合も、元資料の注意書きを勝手に外さず、確認担当者と掲載範囲を決めます。
帯の長さや重なりから、結論を増やさない
項目Bの帯は、項目AやCより長く見えます。この図で示しているのは、原表にある推定値と95%信頼区間です。「回答の人数が多い」「最も幅広い人が利用した」といった個人や人数の説明へ置き換えることはできません。
帯が重なるかどうかだけで、項目間の統計的な差を判定したとも書きません。地域の活動の効果や、ある取組が割合を高めたという説明も、図の編集によって追加する結論ではありません。そうした説明を載せる場合は、資料担当が確定した分析と、その説明の根拠を別に受け取ります。
確定した表と説明を、記念誌の紙面へ組む
図にする前にそろえたいのは、推定値・上下限・範囲の種類が対応した表と、単位、数値を確認する担当者、掲載する説明、使う紙面の寸法です。Webへも載せるなら、携帯画面で凡例と項目名を読み、同じ定義と数値へ戻れる形を考えます。
地域の資料を冊子やWebへ紹介する制作は、地域・公共資料の記録と紹介の詳しい内容をご覧ください。図と本文の編集、数値照合、印刷・Webでの対応範囲と費用は、資料と用途を伺って個別に確認します。推定値や上下限の算出、統計解析や効果の評価を標準の編集作業として約束するものではありません。
確定表、範囲の定義、確認担当者、掲載寸法と公開範囲を添えて、図と凡例を載せる記念誌の制作を相談するへお知らせください。
参考資料
- Office for National Statistics, “Showing uncertainty in charts”。推定の範囲、点と淡い帯、凡例や注記の説明を参照。図の配置と掲載文は本記事の編集提案です。



