家族の作品に模写があったら 作品集で何を伝えるか
親の絵に模写が含まれていたら、作品集から外す前に、何を残したいか考えてみましょう。公開作品の一例から、元作品との関係を伝える説明と、収録する一冊の構成を考えます。
HUKUSYA / JOURNAL

親の絵を作品集にまとめるとき、有名な絵をもとに描いた一枚が見つかることがあります。「本人独自の構図ではないから外したほうがよいのか」と迷うかもしれません。
その一枚から、何を見て、どのように描いてきたかを伝えられることもあります。元作品との関係を確かめながら、今回の一冊に残したい制作の姿に合わせて考えてみましょう。
模写の一枚が伝えるものを考える
独自の構図で描いた作品を中心に見せたいのか、学びや関心の広がりも残したいのか。作品集で伝えたいことによって、収録する範囲は変わります。
模写を含む制作の歩みを伝えたいなら、元にした作品や描いた時期が分かる一枚は、収録候補になります。「模写」という分類に加え、その絵について何が確かめられるかを見ていきます。
ゴッホの一枚を、元作品との関係から読む

メトロポリタン美術館(The Met)所蔵の《First Steps, after Millet》は、ミレーの作品をもとにゴッホが描いた絵です。同館の作品解説では、弟テオから届いた白黒写真をもとに、ゴッホが色を加えて描いたことが説明されています。
元にした作品と、その図を色彩に置き換えて描いた人との関係が分かると、この一枚の制作を読む手がかりになります。家族の作品についても、その絵を描いたときの資料から、確かめられる関係を探してみます。
分かったことを、短い紹介頁に添える

この紹介頁では、ゴッホの作品全体と作品名、制作年を示し、ミレー作品を写した白黒写真をもとに描いた関係を短く添えています。元作品との関係が分かると、何を見て描いたかを伝える手がかりになります。
家族の作品では、本人のメモや裏書き、手元の資料などから、次の内容を確かめます。
- 元にした作品名や作者名が分かるか。
- 描いた時期や、制作の目的が分かる記録はあるか。
- 確認できた内容と、まだ分からない内容はどこか。
似ているという印象だけで模写元を断定したり、目的が分からない絵に「練習」「失敗」という評価を加えたりせず、確認できた内容を説明にします。資料を調べたい作品は確認待ちにし、分かっている作品から構成を考えられます。
一冊の中での置き方を選ぶ
元作品から学んだ制作を伝えたいなら、確認できた絵を一つの章にまとめる方法があります。元作品との関係を各頁に添えると、その章で何を見てほしいかが伝わります。章名も、確かめられた制作内容に合わせて考えます。
ほかの作品と並べて、題材や表現への関心のつながりを見せる方法もあります。どの作品の前後に置くと、今回残したい制作の姿が伝わるかを考えます。本人の制作目的が分からない部分は、説明を補って断定しないようにします。
収録候補を選んだら、その一枚を入れる理由を短く言葉にしてみます。「元にした作品との関係も含め、描いてきた歩みを残したい」といった希望があると、作品集の構成を相談する手がかりになります。
作品と画像の掲載条件も確認する
元作品との関係を説明する文を用意し、あわせて冊子への掲載やWeb公開の条件を確認します。誰にどう渡すか、どこへ公開するかを依頼先へ伝え、作品と画像それぞれの利用条件を確かめます。
文化庁の案内では、模写や二次創作をネットに公開する場合、原則として権利者の許可が必要であることや、公開された利用ルールを確認することが説明されています。
本記事では、The MetがPublic Domainと表示し、同館のOpen Access方針でCC0の対象とする図版を使用しています。手元の別の作品については、その作品と画像の条件を個別に確認します。
複写の作品集・カタログ制作では、作品画像や原稿をもとに、収録順や説明文を整理する編集・デザインをご相談いただけます。模写を含む作品画像、分かる元作品や制作メモ、渡したい相手を添えて、残す範囲と冊子の構成をご相談ください。



