原稿用紙の推敲を残すには
手書き原稿の取消線や書き足しを残しながら、読める訂正を反映した本文を並べる記念冊子の紙面案。原稿2枚と本文を対応させ、読めない字や不足する頁の扱い、確認者と共有範囲の決め方を紹介します。
HUKUSYA / JOURNAL

手書きの原稿を記念冊子にするとき、文章を通して読んでもらいたい一方で、消した言葉や書き足した跡も残したくなります。原稿全体の画像に、読める訂正を反映した本文を並べると、書き直す前の言葉と、読み進めるための文章を一緒に見返せます。
ここでは「雨のあとの道」という短文の原稿2枚から、冊子本文の2–5頁を組む案を紹介します。原稿番号で画像と本文を対応させ、3箇所の訂正は短い推敲メモにも残しました。

消した言葉を残し、読める訂正を本文へ反映する
原稿1の黒字は、次の2文です。
雨がやむと、庭の土の色が黒く見えた。門までの道には、水たまりが残っていた。
「黒く」に赤い取消線が引かれ、そばに「濃く」と書かれています。「水たまり」の直前には「小さな」が書き足されています。この案では、その2箇所を読む本文へ反映しました。
雨がやむと、庭の土の色が濃く見えた。門までの道には、小さな水たまりが残っていた。
消された「黒く」は原稿画像に残ります。推敲メモにも「黒く→濃く」「水たまりの前に小さな」と書けば、本文で変わったところを短く見返せます。送り仮名や句読点は、ここに見える訂正以外には変えていません。
原稿は、四辺と欄外まで残す
原稿画像には、紙の四辺、欄外の書き足し、原稿番号まで入れます。本文のあるところだけを切り取ると、欄外の語や番号が外れてしまうことがあります。残す画像を先に確かめてから、冊子に使う大きさを考えます。

画像を確認する際は、頁の抜けや重複、順序、紙面の欠け、文字が読めるかを見ます。国立国会図書館の『資料デジタル化の手引2017年版』にも、こうした確認項目が挙げられています。[1]
この案の原稿番号は1と2です。画像ファイルが逆の順に並んでいても、番号と文のつながりから対応を確かめます。原稿の番号と、これから組む冊子のページ番号は、それぞれ残します。
原稿1と読む本文を、2–3頁に並べる
冊子の左の2頁に原稿1の全体画像、右の3頁に題名と読む本文を置きました。原稿を見ながら文章を追えるよう、同じ見開きに収める案です。

原稿のマス目に沿った行替えは画像で見せ、読む本文は冊子の幅に合わせて組みます。語句や句読点を保ったまま、文字の大きさと行間を整えます。推敲メモは本文の下へ置き、文章を読んだ後で変更を確かめられるようにしました。
下部の「原稿番号1」「原稿1から読む本文」が対応を示し、冊子の頁は2と3です。原稿の番号1を冊子の1頁と取り違えないための表示です。
原稿2も、同じ番号で対応を付ける
原稿2の黒字は、次の2文です。
私は足を止め、空を見上げた。雲の切れ間から、白い光が差していた。
「私は」と「足」の間に、「しばらく」が赤字で書き足されています。この案で読む本文は、次のようになります。
私はしばらく足を止め、空を見上げた。雲の切れ間から、白い光が差していた。

4頁に原稿番号2、5頁に「原稿2から読む本文」を添えました。推敲メモは「私はと足の間にしばらく」です。前の見開きと同じ位置に原稿・本文・メモを置くことで、二つの対応を続けて見られます。
ここで示したのは、冊子本文の2–5頁の編集案です。表紙や奥付、前後の文章は、残す原稿の量と一冊の構成に合わせて考えます。
読めない字と足りない頁は、未確定で残す
書き足した語が読めなかったり、どの位置へ入れるか分からなかったりする場合は、その箇所を未確定として残します。原稿画像を保存し、確認できた語と、確認が必要な箇所を分けておきます。読みやすい文になるという理由で、語句を補って確定することは避けます。
米国国立公文書館の転記案内でも、書かれた文字、取消語、判読できない語を区別して扱っています。[2] この案では、読める訂正を反映した本文と、訂正の跡が見える画像・メモを対応させています。
原稿2が見つからなければ、原稿1だけ確認済みとし、2枚目は不足と記録します。番号の続きや文章の流れから想像して、2枚分がそろったことにはしません。前後の原稿や別の写しがあるかを確認します。
紙上で読める訂正を反映できても、いつ直したか、これが作者の最終稿かまでは、それだけでは分かりません。別の原稿や本人の記録で確認できたことは、その根拠を添えて残します。
原稿の確認者と、冊子を渡す相手から相談する
文字を読む人と、冊子に載せる本文を確定する人を決めておくと、判読の迷いや編集上の変更を相談しやすくなります。作者本人に確認できる場合は本人へ、家族でまとめる場合は原稿に詳しい人へ、確認した箇所と未確定の箇所を示します。現在の編集担当が別に語句を変えるなら、その変更も著者の赤字とは分けて残します。
家族内で渡す冊子か、知人へ配るのか、Webでも見せるのかによって、掲載する原稿や説明の範囲も考えます。第三者の名前や私的な内容がある場合は、掲載してよい範囲を確認してから組みます。
複写では、資料画像や確定した原稿から、冊子の構成と紙面を相談できます。原稿の枚数・大きさ・状態、手元の画像、確認済みの本文、冊子を渡す相手をお知らせください。撮影やデータ化から必要な場合も、原物の状態と用途に合わせて対応を確認します。
文字起こし、難しい筆跡の判読、校正が必要なら、誰がどこまで行うかを見積もり前に確認します。残す原稿画像と読む本文を並べるところから、一冊の形を考えられます。
冊子づくりの詳しい内容は作品集・カタログ・Web制作、撮影の対応は絵画・立体作品の撮影の案内をご覧ください。
参考資料
- 国立国会図書館:資料デジタル化の手引2017年版 — 4.2.1.2・表4.2、印刷47頁。画像の抜け・重複・順序、紙面の欠けと文字の判読を確かめる参考。
- 米国国立公文書館:Get Started Transcribing — 検索を助ける転記の案内。取消語、判読できない語、注記の扱いを確かめる参考。



