家族へ渡す作品集と、初めて見る人へ渡す作品集
家族と初めて作品を見る人へ、同じ作品を使う作品集の文章をどう書き分けるか。二つの完成見開きから、共通の情報と添える言葉を選びます。
HUKUSYA / JOURNAL

自分の作品を、家族にも、展示で初めて会う人にも渡したい。同じ作品集の原稿をそのまま使えそうですが、家での呼び名を知る人と、作品を初めて見る人では、読み始める場所が違います。
作品画像と確かな基本情報は揃え、添える文章を選び直す。ここでは《窓辺の赤い器》の同じ一枚を、二つの作品集の見開きに組みました。両方で画像の大きさ、作品名、作者の位置は同じです。
家族には、知っている呼び名を残す
この案では、作者の兄が、家ではこの絵を「赤い器の絵」と呼び、居間に掛けていたころを覚えていると想定します。その言葉を作品名の代わりにせず、誰の記憶かが分かる場所に置きました。

紙面の文章は「家では、この絵を『赤い器の絵』と呼んでいました。居間に掛けていたころ、帰ると最初にこの赤が目に入りました。」。下に「作者の兄の記憶より」と添えています。家族の間で通じる呼び名を残しつつ、《窓辺の赤い器》という作品名や作者の表記と混ぜないためです。
実際の作品集なら、記憶を話した人、元の言葉、掲載する文章を確認します。家族の中でも覚え方は同じとは限りません。思い出の文章を作品の制作年や作者の意図の説明に置き換えず、その人の言葉として残します。聞いた言葉を整えるときは、絵の写真に思い出を添える方法も参照できます。
初めて見る人には、絵の入口をつくる
展示で作品を初めて見る人には、家での呼び名も居間の様子も共有されていません。そこで同じ見開きから私的な文章を外し、実際に見える形を短く伝える文へ替えました。作品画像、作品名、作者の位置は変えていません。

こちらの文章は「窓の明るさを背に、赤い器と青い布が並んでいます。丸い器の縁と、幾重にも折れた布。視線を行き来させると、形の違いがよく見えます。」。見える対象を示すだけで、作者が何を表現したかったかまでは決めつけません。
二つの文の差は、長さより前提にある
二つの見開きで共通にしたのは、作品そのものと《窓辺の赤い器》、Aさんという表記です。家族版には、作品と一緒に覚えている呼び名や場所の記憶を置きました。初見版には、絵を見れば確かめられる赤い器、青い布、窓の明るさを置きました。違いは文字数ではなく、読む人が最初から知っていることです。
もちろん、家族が作品名を知らないことも、展示に来た人が作者をよく知っていることもあります。家族には観察文が不要、初見の人には記憶を載せられない、と決めてしまう必要はありません。誰に配るかを思い浮かべ、その人にない手がかりを選びます。
同じ冊子を二種類つくるか、共通の冊子に家族向けの別紙を添えるかも、配布する相手と部数で選べます。まず一つの作品の見開きを実際に組むと、どの部分を共通にできるかが見えてきます。
画像と原稿を分けて、相談する
作り始める前に、作品名・作者名など確かな情報と、家族から聞いた言葉を分けます。言葉を載せる先が家族内の冊子なのか、展示で配る冊子やWebなのかも確認します。家族向けに整えた私的な文章を、配布先だけ変えてそのまま移すとは限りません。
複写では、作品の撮影・スキャンからでも、手元の画像からでも作品集の編集を相談できます。画像の状態、使いたい大きさ、原稿、配布先、ページ数や部数をお知らせください。撮影が必要か、編集や印刷をどこまで頼むかは、内容を見て個別に確認します。[1]
参考資料
- 複写「作品集・カタログ・Webサイトの制作」、「絵画・書道・立体作品の撮影・スキャン」。既存画像からの制作、作品撮影、説明文・紙面編集と、追加制作の見積もり範囲を参照。
参照日:2026年9月29日。



