寄稿文と作品写真を、記念冊子の中でつなぐ
作品に寄せた短い文章と、活動全体を語る寄稿。同じ二つの原文で紙面を組み、置き場所と作品への案内を考えます。
HUKUSYA / JOURNAL

作家の活動の節目に記念冊子を作るとき、作品写真に加えて、友人や同業者からの寄稿文を載せることがあります。原稿が届いたら、掲載順を決める前に、何について語られているかを読んでみます。一点の絵を見た場面なのか、長く制作を続けてきた人との関わりなのか。その違いから、作品と文章の置き場所を考えられます。
この案では、活動の節目の冊子に、友人と同業者から二つの寄稿が届いた場合を考えます。作品は《雨の窓》。同じ作品写真と二つの原文を使い、寄稿を一章にまとめる案と、一点を語る寄稿を作品の近くへ置く案を組みました。
寄稿が語る範囲を読む
友人の佐伯実さんによる「窓の前で」には、雨の窓と空いた椅子が出てきます。作品を見たときに浮かぶ、寄稿者自身の記憶と感想です。
窓の前で
佐伯 実(友人)
この絵を見ると、雨の日に窓辺で話した時間を思い出します。外の景色を眺めて、話が途切れても急いで言葉を足さない人でした。
空いた椅子は、誰かを待っているようにも見えます。私には、いつでも座ってよいと言われているように感じられます。
一方、同業者の森川綾さんによる「話を待つ時間」は、制作を続ける人との関わりを語っています。ある一点の解説にせず、独立した読み物として残せる文章です。
話を待つ時間
森川 綾(同業者)
制作のことを話すとき、すぐに答えを決めず、こちらの言葉が落ち着くまで待ってくれました。うまく説明できない日も、話し終えるころには、次に試したいことが一つ見えていました。
完成した作品を並べるだけでは、そうした時間は見えません。長く制作を続けてきた姿を思うと、私はまず、あの静かな聞き方を思い出します。
どちらも、ここに載せた全文を二つの案で使っています。作品写真は、《雨の窓》の全体で見返せます。
A案:寄稿を一章にまとめ、作品へ案内する
まず、作品のページと寄稿の章を分ける案です。《雨の窓》は10ページに置き、向かいの11ページに、二つの寄稿の題名・寄稿者名・掲載ページを載せました。「窓の前で」は18ページ、「話を待つ時間」は19ページへ続きます。

寄稿の章では、一人ずつの文章を続けて読めるよう、見出しと名前をそれぞれのページに置きました。「窓の前で」の下には、言及する作品の掲載ページを、編集部からの案内として添えています。

複数の人の言葉をひとまとまりで読みたい冊子なら、この配置から考えられます。文章に具体的な作品が出てくる箇所には、作品名とページを添えると、離れた作品ページへの行き先を示せます。
B案:一点を語る寄稿を、作品の向かいへ置く
もう一つは、《雨の窓》の向かいの11ページに「窓の前で」を置く案です。窓と椅子を見ながら、文章に出てくる場面を読めます。作品の写真の大きさと、寄稿本文の文字の大きさはA案とそろえています。

活動全体を語る「話を待つ時間」は、後ろの18ページに残しました。19ページには寄稿者一覧を置き、「窓の前で」は11ページ、「話を待つ時間」は18ページと案内しています。寄稿を作品の近くへ移しても、名前から文章を探す入口を用意できます。

一点についての文章を、その絵と一緒に読んでほしい場合にはB案が候補になります。ただし、長年の活動や人との関わりを語る寄稿まで、無理に一つの作品の解説にする必要はありません。一冊の中で、作品のそばに置く文章と、独立して読む文章を選べます。
寄稿者の言葉と、編集者の案内を分ける
二つの案で変えたのは、置く場所と編集部からの案内です。A案の案内は「この寄稿で触れている作品《雨の窓》は、10ページに掲載しています。」。B案では「この寄稿で触れている作品《雨の窓》は、向かいのページに掲載しています。」としました。いずれも、寄稿本文の下に線を引き、「編集部より」と示しています。
「空いた椅子は、誰かを待っているようにも見えます」という言葉は、寄稿者の感じ方です。これを編集側で「作者は誰かを待つ椅子を描いた」と書き換えると、作者の意図を説明する文になってしまいます。作品への行き先を補うときも、誰の言葉かが変わらないようにします。
実際の冊子では、寄稿者に、掲載する全文・見出し・氏名の表記・配布範囲・置き場所を確かめておきましょう。文章を短くしたい場合や、一部だけを見出しに使いたい場合も、配置の調整と原文の変更を分けて相談します。作品の題名やページ番号は、掲載順が決まった後の紙面に合わせて読み戻します。
届いた寄稿と作品写真を、冊子へまとめる
原稿を一章にまとめたいのか、言及する作品の近くへ置きたいのか。まずは、届いた文章に出てくる作品名や場面を確かめ、活動全体を語る文章とは分けてみてください。掲載原文を保ちながら、作品名・ページ・寄稿者一覧で読み手の行き先を補えます。
ご相談の際は、掲載したい作品写真と寄稿原文、分かっている作品情報、冊子を渡す相手や配布予定をお知らせください。原稿に手を入れるか、配置と案内を整えるかも含め、必要な編集・レイアウトの範囲を整理します。制作内容の詳しい案内は、作品集・カタログ・Web制作をご覧ください。



