故人の端末に作品原稿があるとき――入手の相談と、冊子にする編集を分ける
手元で読める原稿、公式のアクセス確認が必要な資料、所在の手がかりだけの資料を分けましょう。入手状況の整理案から、今ある資料で考える冊子の範囲と、待つ部分を決めます。
HUKUSYA / JOURNAL

故人の端末に作品の画像や文章があると分かっても、すぐに原稿として読めるとは限りません。作品集を考えるときは、手元で内容を確認できる資料と、公式のアクセス確認が必要な資料、所在の手がかりだけの資料を分けましょう。
端末やアカウントへのアクセスを相談する作業と、入手できた原稿を冊子へ編集する作業では、窓口と確認する内容が変わります。まず入手状況を表にし、今ある資料で考える範囲と、資料を待つ範囲を決めます。
所在が分かることと、原稿を使えることを分ける
「パソコンに入っているはず」「クラウドに写真があると聞いた」という情報だけでは、どの作品がどの状態で残っているかは確定できません。実際に読める文章や画像の写しがあるか、誰が何を確認できたかを、資料ごとに記録します。
国民生活センターの2024年11月20日公表資料では、デジタル遺品を巡り、IDやパスワードの手がかりがなく手続きに困る相談や、故人の端末のパスワードが分からない場合に第三者のロック解除が難しいという特徴が紹介されています。[1] 端末を渡せば原稿を取り出せると、制作の日程を先に決めないようにします。
三資料の案で、入手状況を並べる
この案では、Aを手元で読める文章一件、Bをアクセス確認が必要な写真のまとまり、Cを所在のメモだけがある作品として置きます。入手状況を話し合うために作った三資料の整理案で、実際の故人の原稿を受領した記録や、アカウントへのアクセスを確認した結果ではありません。
| 資料と状態 | 制作へ進める前に確かめること |
|---|---|
| A|手元で読める文章 | 文章一件の写しが読めるという案。内容、出所と受け取った経緯、掲載してよい範囲を確認する。入手したことだけで掲載の確認が済んだ扱いにしない。 |
| B|アクセス確認が必要な写真 | クラウドにあるとされる写真で、画像の写しは未入手という案。利用先と対象データ、申請する方の立場・必要書類を、利用サービスの正式窓口で確認する。 |
| C|所在の手がかりだけ | 作品の所在を示すメモはあるが、作品の内容は未確認という案。誰から何を聞いたかを整理し、所蔵先への確認は正当な窓口と権限を確かめて進める。 |
実案件の表には、実際の資料名と場所、入手できた日、確認する方、未確認の点を対応させます。分からない欄は未確認とし、作品の内容、アクセスできる見込み、提供してもらえる範囲を推測で埋めません。
端末やサービスの手続きは、正式な案内へ相談する
アカウント内の資料が必要な場合は、利用していたサービスの公式案内を確認します。誰が申請できるか、どの書類を用意するか、対象になるデータは何かを、そのサービスの窓口で確かめます。遺族であることだけで全ての資料へアクセスできると、一律に判断しません。
たとえばAppleは、故人のApple Accountへのアクセスを申請する仕組みを案内し、法的書類の提出と審査、国や地域による要件の違いを説明しています。[2] これはAppleのサービスについての案内です。ほかの端末やアカウントへ同じ条件を当てはめず、実際の利用先に沿って確認します。
同じ案内には、パスコードで暗号化された端末について、消去せずにパスコード解除を手伝うことはできないという制約も示されています。[2] 端末を再利用する目的と、作品データを残す目的を混ぜず、初期化や削除を行う前に、必要な原稿と対象のデータを公式窓口へ伝えて確認しましょう。
契約先の確認や解約などで困る場合、国民生活センターは、住んでいる自治体の消費生活センター等への相談を案内しています。[1] 作品の編集に進める範囲と、契約やアクセスについて相談する範囲を分けて整理できます。
入手できた資料で、冊子の範囲を先に考える
この三資料の案なら、Aの文章を中心にする構成を先に考え、BとCは待つ資料として分ける案があります。実際に内容を読めた原稿と、その掲載確認ができた範囲を使って、一冊にする内容を検討します。
目次の構成案は、次の三項目にできます。
- はじめに――今回まとめる資料の範囲
- 入手できた文章
- 資料の入手経緯と、確認できたことの注記
ここで示すのは構成だけです。故人の文章や気持ちを編集側で書き足したり、未入手の写真を、本人の作品が載っているように見せる代わりの画像で埋めたりする案ではありません。入手経緯や注記も、実際に確認できた事実に合わせて書きます。
写真を含めた作品集にしたい場合は、Bの資料を待つ範囲と、待つ時点を決めてから日程を考えます。アクセスや原稿の入手が確定する前に、全点を収めた冊子の完成や発送を約束しないようにします。
データを受け取った後も、掲載の確認を行う
資料を取り出せたことと、冊子へ掲載してよいことは分けて確認します。作品の作者や掲載してよい範囲、写っている方や第三者の情報、公開・配布の相手について、実案件で確認する方を決めます。
文章を抜粋する、写真の一部を切り出す、インターネットでも見せるなど、使い方を変える場合も、その範囲を合わせて確認します。入手したファイルの一覧と、最終的に載せる資料の一覧を対応させ、未確認のものを印刷原稿へ混ぜないようにします。
今ある資料と、待っている資料を一緒にお知らせください
複写 HUKUSYAへ相談するときは、手元で読める画像・文章の写し、入手経緯、今回作りたい冊子の範囲、まだ待っている資料をお知らせください。資料所在・入手状況の表があれば、使える原稿で進める部分と、確認が必要な部分を整理できます。
画像・原稿からの冊子制作案内から、入手できた資料の構成・編集・デザイン、印刷・製本を相談できます。端末のロック解除、アカウントの回復、相続に関する判断や原稿回収の成功まで、冊子制作に含まれるものとしては約束しません。資料を確認する担当と掲載範囲、編集作業の範囲・費用を分けて決めます。
参考資料
- [1] 国民生活センター「今から考えておきたい『デジタル終活』」(2024年11月20日公表。相談事例の特徴と相談先の案内)
- [2] Apple「亡くなったご家族のApple Accountへのアクセスを申請する」(同サービスの申請と端末に関する制約の案内)



