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手描き地図を冊子で紹介する|全体と部分、今の地理を分ける

手描き地図を全体と二つの部分で紹介し、描かれた時点と現在の施設案内を分ける。公開写図の天守・草木と鳥を使い、元の表現へ戻れる見開きと相談の準備を考えます。

武州豊嶋郡江戸庄圖の原画像全体を、縦横比と向きを保って大きく見せた図版HUKUSYA / JOURNAL

手描きの地図を冊子や展示で紹介するときは、全体と見どころの拡大をそろえ、描かれた時点と現在を確かめる資料を分けて載せます。屋根や草木の描き方を楽しむ欄と、今の場所を案内する欄を置き分けることが、地図の表現を残すための出発点です。

ここでは、東京都立中央図書館が公開する写図『武州豊嶋郡江戸庄圖』を使い、全体、天守、草木と鳥の二つの部分を紹介する見開きを考えます。掲載画像は同館の公開デジタル複製です。

元の図と、書き写された時点を分ける

同館の目録と資料解説は、この図を寛永9(1632)年頃の江戸を描き、寛政2(1790)年に書き写された図と説明しています。冊子でも、描かれた時代と、この写図が作られた時点を別に記します。

所蔵館、資料名、請求記号もそろえておくと、説明を確かめるときに元の資料へ戻れます。今回の請求記号はA13-2/東A13-002です。目録の寸法85.4×118.5cmは、所蔵館が記した値として扱います。

誰が何のために描いたかは、根拠のある範囲で添えます。この写図を描いた人の意図を裏づける資料は今回確かめていないため、見開きの目的欄は「未確認」としました。絵の特徴を説明することと、作者の意図を説明することを分けています。

全体から、天守と草木の部分へ目を移す

まず全体を載せ、部分をどこから切り出したか示します。この図では、天守の絵と、草木や鳥を描いた箇所を選びました。全体に①②を付け、拡大画像にも同じ番号を添えると、部分を読んだあとで周囲の描写へ戻れます。

武州豊嶋郡江戸庄圖の全体に、天守の部分を①、草木と鳥の部分を②として枠と番号を添え、切り出した位置を示した図
『武州豊嶋郡江戸庄圖』の全体。所蔵:東京都立中央図書館。①②の番号と部分の枠は説明のために追記しました。画像を開くと拡大できます。

①では、重なる屋根や壁を斜めから描いた天守の形を見せます。②では、草の線と鳥の姿を一つのまとまりとして見せます。小さな地名まで解読して説明するより、紹介したい表現が見える範囲を選ぶと、拡大する理由が伝わります。

元画像の縦横比と向きも保ちます。この公開画像は上側に「西」、右側に「北」が記されており、現在の案内図と同じ向きだと決め付けて回転させると、図中の文字と見せ方がかみ合わなくなります。

現在の地理は、別の根拠に戻って確かめる

古図の絵を、そのまま今の建物や道の案内に使うことはできません。今回、現在の施設を確かめる資料には宮内庁の皇居参観の案内を使いました。同案内は、皇居東御苑の施設として天守閣跡を紹介しています。公式イラストマップの案内では「天守台」が示され、その天守台に天守は建てられなかったと説明されています。

見開きでは、古図の天守の描写を読む欄と、現在の施設案内を確かめる欄を分けました。古図の絵と現在の天守台について、正確な位置・向き・縮尺の対応を示したものではありません。現地への案内が必要な場合は、現在の公的な案内で位置や経路を別に確認します。

全体と二つの拡大を、見開きで組み合わせる

下の紙面例では、左ページに全体と資料の情報、右ページに①天守と②草木・鳥の拡大を置きました。現在を確かめる資料は右下の別欄にまとめています。古図の文字や欠けを描き直さず、公開画像に見える線や色むらも残しました。

左ページに武州豊嶋郡江戸庄圖の全体と書写・原図の時点、右ページに①天守と②草木・鳥の部分を拡大し、現在の宮内庁の案内を右下の別欄に置いた見開きの紙面例
全体と二つの部分を行き来する見開きの紙面例。『武州豊嶋郡江戸庄圖』(部分を含む)、所蔵:東京都立中央図書館。画像を開くと全体を拡大できます。

全体で見せたいのが町の広がりなら、全体画像の面積を先に確保します。天守の描き方を詳しく紹介したいなら、その拡大を大きく置き、草木と鳥はまとまりが残る幅で見せます。部分を増やす前に、全体へ戻るための番号と、添える説明が収まるかを見ます。

掲載する範囲を変える場合は、全体の枠・番号と拡大画像を一緒に直します。画像の一部を使ったことも、資料名や説明の近くに記します。実際の冊子サイズを決めたら、確認用の紙面で文字と拡大の大きさを確かめ、記録画像に必要な範囲を相談します。

資料の条件をそろえて、記録と編集を相談する

手元の地図を冊子へ載せる相談では、資料の出所と利用条件、寸法、折りや傷み、紹介したい二、三箇所を伝えると、全体と部分をどう記録するかを検討できます。大判資料の取り込みに必要な条件は、図面・大判資料をスキャンするにはも参考にしてください。

今回使った公開画像は、当該資料のパブリックドメイン表示と、東京都立図書館の画像利用案内を確認して採用しています。手元の別の地図を使う際は、その資料の利用範囲を確認します。

複写では、地域資料の撮影・データ化から、画像と説明を組み合わせた冊子やWeb紹介まで相談できます。原地図の状態や撮影場所、全体・分割記録の方法は個別に確認します。自治体・地域団体の資料制作をご覧いただき、地図の出所と状態、紹介したい表現、現在の地理を添える範囲をご相談時にお知らせください。

参考資料

  1. 東京都立図書館デジタルアーカイブ TOKYOアーカイブ:『武州豊嶋郡江戸庄圖』。資料名、目録、所蔵館の資料解説と公開画像。
  2. 東京都立図書館:画像の使用について。当該公開画像の利用と、資料名・所蔵館・部分使用の表示。
  3. 宮内庁:皇居参観、イラストマップ。現在の施設案内と天守台の説明。古図の厳密な位置照合には使っていません。
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