自分史は人生全部を書かなくてもよい?――一冊に残す経験の範囲を決める
人生の概略を伝える本と、一つの経験を読む本では、使う資料と目次が変わります。資料を集める計画と二つの目次案から、今回の一冊の範囲と、収録しない時期の伝え方を考えます。
HUKUSYA / JOURNAL

自分史を書こうとして、幼い頃から現在までを順に埋めようとすると、原稿が進まないことがあります。今回残したい経験へ範囲を絞り、一冊として読める構成を考える方法もあります。まず、誰に何を知ってほしいかと、使える写真・文章・作品を並べてみましょう。
人生の概略をたどる本にするか、仕事や趣味など一つの経験を中心にするかで、必要な資料や書き足す内容が変わります。収録しない時期がある場合は、今回の本の範囲として、読者へ分かるように伝えます。
呼び名や厚さより、この一冊で残したいことから考える
家族へ暮らしの流れを伝えたいのか、一つの仕事に向き合った理由を残したいのか。趣味の作品を見ながら、自分の考え方を伝えたいのか。まず、読む人へ届けたいことを一つ書くと、選ぶ資料の手掛かりになります。
自分史と自叙伝の呼び分けは出版社によって異なり、ページ数や、写真と文章の扱いで分ける場合があると、玄武書房は説明しています。[1] 今回の相談では、呼び名だけで内容や分量を決めず、何を読む一冊にするかを具体的に考えます。
資料の候補を並べ、二つの範囲を比べる
この案では、家族へ手仕事のことを残す本を考え、暮らしの写真六枚、仕事の手記二編、刺しゅうの作品四点、これから書く文章一編を候補にして資料を集める計画にします。集まった資料の内容や利用できる範囲は、本人と確認する方が確定します。
同じ候補からでも、人生の概略を伝える使い方と、刺しゅうを中心に伝える使い方を比べられます。点数をそろえることより、今回の問いを読むために何が必要かを見ます。
| 集める資料の案 | 二つの収録範囲で比べること |
|---|---|
| 暮らしの写真・六枚 | 通史案は時期ごとの暮らしをたどる候補にする。テーマ案は作品の話と関わる写真を選ぶ。撮影時期や写る人が分からない写真は、確認する内容を残す。 |
| 仕事の手記・二編 | 通史案は仕事と暮らしの章で使う。テーマ案は手仕事の話を理解するために必要な部分を選ぶ。関係が薄ければ、今回の本へ収めない案も比べる。 |
| 刺しゅう作品・四点 | 通史案は人生の中の手仕事を紹介する候補にする。テーマ案は作品を中心に章を組む。制作時期や図案の説明は、本人が確認できる範囲で付ける。 |
| これから書く文章・一編 | 通史案は資料だけでは伝わらない時期やつながりを補う。テーマ案は、なぜ作り続けてきたのかを本人が言葉にする。答えや出来事を編集側で作らない。 |
人生の概略を読む目次案
暮らしの流れを家族へ伝えたい場合は、時期や出来事のつながりをたどる構成が考えられます。この案の目次は、次のように置きます。
- 育った環境を振り返る
- 仕事と暮らしをたどる
- 刺しゅうの作品を並べる
- 変わったこと、続けたこと
- 今、家族へ伝えたいこと
資料のない時期があれば、本人が書けることや、確認できる写真・文章があるかを確かめます。目次に章を置いたからといって、その時期の出来事が確認できたことにはなりません。概略をたどる本でも、すべての出来事を同じ分量で書く必要はなく、今回伝えたい流れを選びます。
刺しゅうを中心に読む目次案
今回の問いを「どうして作り続けてきたのか」に置くなら、作品と、その制作について本人が残したいことを中心に組めます。同じ候補から、次の目次案を考えます。
- この一冊で残す作品
- 図案と、手を動かす時間
- 作品を通して振り返る暮らし
- 家族へ渡したいことば
仕事の手記や暮らしの写真は、作品の話に関わる範囲で添えます。幼少期からの流れを補うために章を増やすのではなく、今回の問いを読むために必要かを選びます。本人がまだ理由を言葉にしていないなら、作品を見ながら書くことや、話して原稿にする進め方を相談します。
暮らしの大きな流れも添えたい場合は、短い年表を別に置く案もあります。年表へ載せる年月や出来事は確認して決め、テーマを中心にする本文と役割を分けます。
収録する範囲を、冒頭の言葉へ反映する
テーマ別の案を選ぶ場合、冒頭には次のように範囲を書く方法があります。
この本は、刺しゅうの作品と、手を動かしてきた時間を中心にまとめます。暮らしや仕事の記録は、作品の話に関わる範囲で添えます。
これは、この構成案のために用意した冒頭文です。実際の原稿では、何を中心にするかと、どの資料を添えるかを本人が確かめて決めます。範囲を先に伝えると、読者も何を読む本なのかをつかみやすくなります。
今回の範囲として収録しない時期と、資料や事実を確認できず未定の箇所は分けて残します。書いていないことを、出来事がなかったことや、すでに確かめたことへ置き換えないようにします。
書ける範囲を決め、必要な確認と追加原稿を相談する
構成を決めたら、使う写真や文章、作品について、名前・年月・説明を誰が確認するかを決めます。他の方の文章や写真を含む場合は、掲載できる範囲と必要な表示も確認します。分からない内容は、推測で補わず確認する項目として残します。
原稿を自分で書くか、作品や写真を見ながら話すかも選べます。聞き取りや追加の執筆が必要なら、どこまでを誰が行うか、本人が原稿を確認する方法と費用を相談します。全生涯を書き切ることを先に目標にせず、今回まとめる一冊の範囲と、そこに必要な原稿から進めましょう。
家族へ残したいことと、資料の候補をお知らせください
複写 HUKUSYAへ相談するときは、読んでもらいたい方、伝えたいこと、写真・手記・作品の候補と、本人がこれから書けそうな内容をお知らせください。まだ全体の原稿がなくても、今回の本で何を扱うかを一緒に考える入口になります。
作品集・冊子の制作案内から、提供いただく写真・文章・作品を使った構成・編集・デザインを相談できます。追加の聞き取りや執筆、確認する担当と範囲、印刷仕様や費用は個別に決めます。
参考資料
- [1] 玄武書房「自分史とは|家族や親族に残せる『あなたの歴史』を綴った記録」(自分史と自叙伝の呼び分け、写真・文章などの構成についての同社の説明)



