実家の作品箱を受け継いだら 家族で見返す一枚から
題名や制作年が分からなくても、家族が見返したい一枚から記録を始められます。作品を選ぶ理由、分かる情報と記憶、まだ決めなくてよいことを分けて考えます。
HUKUSYA / JOURNAL

実家から引き継いだ箱に、親や祖父母の絵が何枚も入っている。懐かしい一枚はあるけれど、ほかの作品の題名や描いた年は分からない。全部を調べて整理してからでないと、記録を頼めないように感じるかもしれません。
家族で見返すための記録なら、まずは残したい理由が分かる一枚から考えられます。昔、部屋に掛かっていた絵。本人がよく描いていた海や山。その一枚の写真に、分かる情報と家族の記憶を添えるところから始めます。ほかの作品の来歴や、箱全体の行き先まで、同時に決める必要はありません。
最初の一枚は、見返したい理由から選ぶ
箱の中で目が留まった作品を、なぜ残したいのか考えてみます。「玄関に掛かっていたから」「父が何度も描いていた港だから」「この色を見ると祖母を思い出すから」。作品としての評価や年代が分からなくても、家族が見返す理由は見つかることがあります。
たとえば、港の絵には見覚えがあり、隣に入っていた林の絵は初めて見るものだったとします。この場合は、港の絵を最初に記録する候補にして、家族に写真を見てもらうところから進められます。林の絵を選ばなかったことは、残す価値がないという判断にはなりません。いま話せる一枚と、これから確かめたい一枚を分けただけです。
ほかの家族には、別の作品が懐かしいかもしれません。「まず、この絵を写真に残そうと思う」と候補を見せると、すべての作品を一度に選んでもらうより、話を始めやすくなります。まだ箱に残っている作品があることも、合わせて伝えておきます。
題名が分からないままでも、残せる情報がある
記録する作品を選んだら、写真と説明が離れないようにします。題名や制作年が作品や手元の記録から確認できれば添え、分からなければ、その欄を推測で埋めません。家族が呼んでいる名前は、作者が付けた題名とは分けて残せます。
先ほどの港の絵なら、写真に添える情報を次のように分ける案が考えられます。
題名・制作年:不明
家族の呼び名:港の絵
長女の記憶:子どものころ、実家の廊下に掛かっていたと思う。
「港の絵」を正式な題名とせず、廊下に掛かっていたことも、長女の記憶として残しています。「子どものころに見た」という話から、制作年まで決めることはできません。記憶を添えることと、作品の来歴を確定することを分けると、後から別の情報が見つかったときにも追記しやすくなります。
家族の記憶が違うときは、急いで一つにまとめなくてもかまいません。一人は廊下、もう一人は居間に飾ってあったと覚えているなら、誰がどう覚えているかを別々に残します。途中で飾る場所を変えた可能性はありますが、確かめていない理由を補って話をつなげる必要はありません。
記録する作品と、原物の行き先を分けて考える
最初の数枚を選ぶと、残りの作品も今すぐ整理しなければと思うことがあります。けれども、今回どの作品を撮るかと、原物を誰が持つか、箱の中を今後どうするかは、それぞれ別に考えられます。
家族へ画像を渡せるようにしても、それだけで原物を手放すことが決まるわけではありません。まだ選んでいない箱は、選ばなかった作品としてひとまとめに処分するのではなく、判断が残っているものとして家族と共有しておきます。
記録の準備を急いで、開きにくい巻物を広げたり、貼り付いた紙をはがしたりする必要もありません。取り出しにくいものや傷みが気になるものは、その状態を先に相談します。写真を撮るために原物の状態を変えることを、準備の必須条件にはしません。
見返す家族を思い浮かべて、渡す形を決める
まず一枚の画像を家族へ送り、残したいことを話す。それだけでも、箱の中にあった作品を一緒に見返す機会になります。作品を選ぶ段階で、立派な作品集や公開用のページまで作ろうと決めなくてもかまいません。
数枚が集まり、短い説明も残せるようになったら、家族で開ける小さな作品集にする案もあります。写真を画面で見るほうがよい人、手元の一冊を開きたい人。誰に渡したいかを考えて、画像だけで残すか、言葉と一緒にまとめるかを選びます。
家族の中で見返すつもりの写真や言葉を、そのまま一般公開することも決めません。渡す相手と、載せる作品・言葉の範囲を家族で確かめてから進めます。
全点の整理が終わる前でも、最初の記録を相談できる
相談するときは、手元にある作品のおおよその種類と量、まず残したい一枚や数枚、誰と見返したいかを伝えます。作品の題名や年代が分からないこと、まだ中を確かめていない箱があることも、そのまま知らせてください。何が分かっていて、何をこれから考えたいのかが伝われば、最初の記録について話を始められます。
複写では、作品の状態と残したい範囲を伺い、撮影・スキャンの方法を確認します。画像データだけで残すことも、必要に応じて家族向けの作品集へまとめることも相談できます。作品の価値を鑑定したり、原物の処分を決めたりするサービスではありません。
対象となる作品や受け渡し前の確認については、作品の撮影・スキャンの案内をご覧ください。「この一枚を、家族ともう一度見たい」というところから、ご相談いただけます。



