自分史と家族史、誰の視点で一冊にする?――語り手と資料の担当を決める
一人が見た家族の話と、複数世代の記録を集める本では、語り手と資料の扱いが変わります。三世代の資料担当表と目次案から、誰の記憶かを残す構成と、共通の時系列を考えます。
HUKUSYA / JOURNAL

祖父母・親・子の写真や文章が集まったときは、一人が見た家族の話を残すのか、複数人の記録を集めるのかを先に決めましょう。誰の視点で読む本なのかが決まると、原稿を書く人、資料を確かめる人、章の分け方を整理しやすくなります。
ここでは、一人の視点で語る案と、三世代の資料を集める案を比べます。家系図を作ることや全祖先を調べることを、今回の本づくりの前提には置かず、残したい記録と確認できる範囲から考えます。
一人の視点で語るなら、見たことと聞いたことを分ける
一人が語り手になる案では、その人が覚えている暮らしや、家族との関わりを中心に組みます。語り手が直接見たことと、他の人から聞いたことを分けると、どの立場から書いているかが伝わります。
たとえば、親から聞いた話を添えるなら、誰から聞いた内容かを残します。本人がその場にいたかのように書き直さず、元の記録や話者との距離を保ちます。別の家族の文章を載せる場合も、語り手の文章へ一律に溶かさず、書いた人が分かる形を考えます。
この案の目次は、次のように置けます。
- 自分が覚えている暮らし
- 家族から聞いたこと
- 今、伝えておきたいこと
家族の全員を同じ分量で紹介する構成にせず、語り手の視点から今回残す範囲を決めます。誰が何を見聞きしたかを、資料や本人の確認に合わせて確定する段階です。
複数人の記録を集めるなら、資料のまとまりを決める
複数世代の記録を読む本では、文章や写真を誰の記録として載せるかをそろえます。この案では、祖父母世代の手紙二通、親世代の写真四枚、子世代の回想文一編を候補に集める計画にします。実際の書き手・写る人・年代・掲載できる範囲は、資料を持つ方と確認する方が確定します。
各世代の資料を集める役と、内容を確認する役を決める案にします。同じ方が複数の役を持つ場合も、どこまでを確認するのかが分かるように残します。担当できる方と掲載範囲は、原稿づくりの前に家族で確かめます。
| 資料のまとまり | 集める人と、確かめること |
|---|---|
| 祖父母世代の記録 | 手紙二通を候補にし、持主が原本と分かる情報を整理する。書き手・日付・本文の読みを確認する方と、掲載範囲を決める方を確かめる。 |
| 親世代の記録 | 写真四枚を候補にし、集める担当が写る人・場所・時期の情報をまとめる。分かることと未確認を分け、説明文を確認する方を決める。 |
| 子世代の記録 | 回想文一編を候補にし、書く人が自分の記憶の範囲を示す。他の人の話を含む部分は、出所と確認する方、掲載範囲を分けて残す。 |
種類と点数は、この構成を比べるための資料収集の計画です。表に役を置いた段階で、担当者の引き受けや、人物・文章の掲載確認が済んだとは扱いません。実際に集まる資料に合わせて担当を確定します。
世代ごとの章と、共通の時系列を合わせる
この三世代の案なら、資料を読む単位を次のように分けます。
- この本の収録範囲と、記録の読み方
- 共通の時系列
- 祖父母世代の資料と覚え書き
- 親世代の文章と写真
- 子世代が残す文章
共通の時系列では、資料の日付と、記録が語る出来事の時期を分けて確認します。ここでは年月欄を埋めず、次の項目を確かめてから並べる計画にします。
- 手紙二通:手紙にある日付と、本文が述べる時期を分ける。分からない年や月は確認する項目として残す。
- 写真四枚:裏書や持主の説明など、時期を決めた出所を添える。時期が未定の写真を推測で年表へ入れない。
- 回想文一編:書いた日と、思い出して書いた出来事の時期を分ける。語り手の記憶として述べた部分を残す。
世代の違う記録が同じ時期へつながる場合も、誰の資料に何が書かれているかを示して整理します。年月をそろえるために、一人の記憶を他の人の記憶へ置き換えないようにします。
書いた人と、確認した内容が分かる形で載せる
複数人の文章を編集するときは、文章の名前や見出しに加え、書いた人を示す方法をそろえます。写真なら、写る人や撮影者、持主など、何の情報かを分けます。続柄は、誰から見た関係なのかが分かるように確認します。
記憶や説明が食い違うときは、編集側で一つの出来事に整えて確定したことにせず、本人や資料を確認できる方へ戻します。確認できない内容は、出所や未確定であることを残し、どう載せるかを決めます。
三世代の案の冒頭には、次のように収録単位を伝える言葉を置く方法があります。
この本は、三つの世代に関わる資料を、書いた人ごとにまとめます。写真や手紙には、分かる範囲で持主と確認した内容を添えます。
これは、この構成案のために用意した文章です。実際の本では、集まった資料と確認できた内容に合わせ、掲載する方と最終原稿を確かめます。
家系の調査と、集まった記録の編集を分けて相談する
国立国会図書館が提供する「先祖・ルーツを調べる」は、系図や姓氏、人物文献などの調べ方への案内です。[1] 先祖について調査したい場合は、このような調べ方の案内と、今回作りたい本の目的を分けて確認します。
家系図を添えるなら、読者が関係を理解するためにどこまで示したいか、何を根拠に確認できるかを決めます。図を付けるために、未確認の関係や年月を補って埋めることはしません。系譜調査や関係の認定を、冊子の原稿整理へ自動的に含める前提にも置きません。
一人が見た家族の話を残す案にも、複数人の記録を集める案にも、今回の一冊としての範囲を決められます。集められる資料と、書く方・確認する方・読んでもらう範囲を合わせて選びましょう。
資料のまとまりと、確認できる方をお知らせください
複写 HUKUSYAへ相談するときは、写真・手紙・文章の種類と候補数、誰の記録として載せたいか、資料を持つ方と内容を確認できる方をお知らせください。家族内で渡すのか、外へ配る予定があるのかなど、掲載・配布する範囲も一緒に確認します。
作品集・冊子の制作案内から、家族から提供いただく写真・文章の原稿整理と編集・デザインを相談できます。追加の聞き取りや調査が必要な場合は、作業の範囲と担当、費用を分けて確認します。
参考資料
- [1] 国立国会図書館提供「先祖・ルーツを調べる」(レファレンス協同データベース)(系図・姓氏・人物文献など、調査方法への案内)



