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社史に二つの推移を載せる 二軸の線の重なりを根拠にしない

社史や周年冊子で単位の違う二つの推移を紹介するとき、二軸の交点を出来事の根拠にしないために。横浜市の公開データを使い、目盛りだけを変えた図と、年度をそろえて上下に分けた案を比べます。

給水人口と年間総給水量を上下に分け、2016~2018年度の位置をそろえた図。上の人数は増え、下の水量は減っている。HUKUSYA / JOURNAL

社史や周年冊子に、人数と取扱量など、単位の違う二つの推移を載せる。左右に別の目盛りを付けて線を重ねると、途中で交わることがあります。その交点を事業の転機として説明する前に、目盛りの範囲を確かめます。数値が同じでも、片側の目盛りを変えるだけで交点は動くためです。

二つの推移を紹介するなら、それぞれの図を上下に置き、年度の位置をそろえる方法があります。単位と原数値の表も添えて、線の見た目から資料にない関係を足さずに読める構成を考えます。

同じ年度の二つの数値を、単位と一緒に確かめる

まず原表で、何を数えた値なのか、単位は何か、年と年度のどちらかを確認します。人口と年間の取扱量では、値の対象や集計方法が異なります。同じ年度の欄にあることだけで、調査した日まで同じとは判断できません。

ここでは、横浜市が公開する「横浜水道130年史」のオープンデータから、2016~2018年度の「給水人口」と「1か年間総給水量」を使います。会社の売上などに置き換えた架空データではなく、公開された水道事業の原値による編集例です。[1]

三つの図で共通して使う数値
年度 給水人口
(人)
1か年間総給水量
(立方メートル)
2016 3,728,079 412,671,300
2017 3,731,661 412,084,500
2018 3,741,272 411,857,800

原CSVでは、給水人口はC列、1か年間総給水量はG列です。「総人口」や「1日平均給水量」と取り違えないよう、見出しごと確かめます。原表の注記では1952年以降を年度としているため、今回も年度表記を保ちます。

二軸の交点は、二つの値が同じになった場所ではない

図Aでは、給水人口を左の目盛り、年間総給水量を右の目盛りで読みます。青い線と赤茶の線は2017~2018年度の間で交わりますが、人数と水量が同じになったことを意味しません。二本の線は、それぞれ異なる単位と目盛りで置かれています。

図A。給水人口は左軸、年間総給水量は右軸で表示し、二本の線が2017年度と2018年度の間で交差する。
図A:左軸は3,720,000~3,750,000人、右軸は411,000,000~413,000,000立方メートル。両軸とも0から始まっていません。図Aを大きく見る

線は三つの年度値を結んだものです。交点の日付を求めたり、年度の途中で何かが起きた証拠にしたりはできません。この原表から日々の変化を補った図ではないためです。各年度の正確な数値は、線の高さから全桁を読み取ろうとせず、上の表へ戻って確かめます。

右側の目盛りだけを変えると、交点が移る

図Bでは、六つの数値、年度の位置、左の目盛りを図Aと同じに保ち、右の目盛りの範囲だけを410,000,000~418,000,000立方メートルへ変えました。交点は2016~2017年度の間へ移っています。

図B。図Aから右軸の範囲だけを変更すると、同じ六つの数値でも交点が2016年度と2017年度の間へ移る。
図B:左軸は図Aと同じ。右軸の範囲だけを広げた表示です。両軸とも0から始まっていません。図Bを大きく見る

動いたのは表示上の交点で、原表の値や事業の経緯ではありません。「ここで二つの動きが逆転した」「この交差を境に変化した」といった説明を交点だけから付けると、目盛りの選び方を出来事の根拠にしてしまいます。

二つの系列に関係があるかを説明するには、図の重なり以外の根拠が必要です。この三年度の比較では、相関や原因と結果を分析していません。図Aと図Bは、軸の変更による見え方の違いを確かめるためのものです。

上下の図で年度をそろえ、それぞれの推移を読む

図Cは、上に給水人口、下に年間総給水量を置いた掲載案です。2016、2017、2018年度の横位置をそろえ、単位と縦の目盛りはそれぞれの図に付けます。二本の線を同じ面で交差させず、同じ年度の二つの値へ順に戻れる配置です。

図C。給水人口と年間総給水量を上下の独立した図に分け、三年度の横位置をそろえた掲載案。
図C:同じ六つの値を上下に分けた案。上は人、下は立方メートルで、縦軸の範囲は図Aの各軸と同じです。どちらも0から始まっていません。図Cを大きく見る

この三年度の原値では、給水人口は増え、年間総給水量は減っています。上下の図からその向きを見たあと、表で各年度の値を確認できます。ただし、別々の単位と範囲を使っているため、上下の線の傾きの大きさをそのまま増減率として比べることはできません。

冊子へ載せる際も、図のそばに項目名・単位・年度を置き、原数値表と出典へ戻れるようにします。図を小さくして目盛りが読めなくなる場合は、紙面を広げる、図を分けるなど、掲載寸法に合わせて調整します。

原表と、載せたい説明をそろえて相談する

社史の図版を相談するときは、二つの系列の原表、項目の定義と単位、対象期間、欠けた値や途中の定義変更が分かる注記を用意します。図に添えたい文章も一緒に渡すと、原資料から説明できる範囲を確かめられます。掲載の可否と内容を確認する担当者も決めておきます。

複写の企業資料の記録と活用では、会社の歩みを冊子やWebで紹介するための編集・制作をご相談いただけます。確認済みの数値や説明をどのように配置するか、図表の作成に対応できる範囲と費用は個別に確認します。新しい調査や因果分析が必要な場合は、その判断を担う専門担当との分担も整理します。

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原資料と利用条件

[1] 出典:横浜市「横浜水道130年史」オープンデータ「給水人口、給水量などの推移」。2016~2018年度の二項目を複写が抜粋し、三つの図にしました。原表の注記・その他の項目は、横浜市の公開ページと原CSVをご確認ください。オープンデータの利用条件はCC BY 4.0です。この記事と図は複写による編集例です。

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