初めて社史を作る担当者へ 会社の全資料を本にする前に決めたい範囲
初めての社史・周年誌で、会社の全資料を本にする前に決めたい範囲。資料メモと三つの企画案から、対象期間・事業、資料の所在、社内確認者、保存と掲載の違いを整理します。
HUKUSYA / JOURNAL

初めて社史や周年誌の担当になると、創業から現在までの資料を全部集めないと、制作を始められないように感じることがあります。けれど、最初の相談で決めたいのは、資料を何箱集めるかだけではありません。「今回の一冊で、誰に、どの範囲を伝えるか」が分かると、先に探したい資料と、確認が必要なことを選べます。
会社の歩みを広く紹介する、特定の事業の変化を残す、今回の節目を記録する。同じ会社の資料でも、目的によって本へ載せる範囲は変わります。保存しておきたい資料の全体と、今回の本に掲載する資料を分けて考えてみましょう。
最初に、誰が読む一冊かを一文にする
「周年だから本を作る」だけでは、資料を選ぶときの基準が決まりません。新しく入った社員へ会社の歩みを伝える、ある事業に関わった人の記録を残す、節目に行う取り組みを社内へ共有するなど、誰に何を届けたいかを一文にします。
会社の全期間、全事業、全拠点を扱うかは、その後で考えます。幅広い歩みを紹介したい場合も、確認できる記録のある時期と、追加の調査が必要な時期は分けておきます。資料が少ない期間を、推測でつないだ沿革へすることはできません。
一冊にすべてを盛り込もうとする前に、今回の目的と、今ある記録で確かめられる範囲を並べて相談すると、何から着手するかを考えられます。
資料の一覧には、所在と未確認のことを書く
初めから一つの場所へ全資料を運ぶのではなく、まずは「何が、どこにありそうか」をメモする方法があります。下は、企画範囲を比べるための資料メモの記入例です。実際の会社の所蔵状況や、確認済みの沿革を示す一覧ではありません。
| 資料の候補 | 所在・未確認事項のメモ例 |
|---|---|
| 古い会社案内 | 総務へ保管場所を確認する。何年分が残るか、発行年が読めるかは未確認。 |
| 事業ごとの冊子 | 各部署へ所在を聞く。対象事業の冊子が連続して残るかは未確認。 |
| 記録写真 | 広報へ紙写真と画像データの所在を確認する。撮影時期・場所・写っている内容の確認者も未定。 |
| 社内報 | 担当部署へ保管状況を聞く。どの号に必要な出来事が載るかは調査前。 |
| 今回の節目の資料 | 企画担当へ予定と作成中の資料を確認する。確定する情報と、これから記録する内容を分ける。 |
分からない欄は、空欄を埋めるために推測せず、「未確認」「担当部署へ確認」と残します。見つかった資料だけで会社の出来事まで確定したことにはならないため、資料を探す人と、記載する事実を確かめる人も分けて考えます。
写真を先に何枚か見せられる場合は、資料の種類や読み取れる情報を共有する入口になります。それだけで、残る写真の状態や、全資料の量まで確認できたとは扱いません。
同じ資料から、三つの刊行範囲を比べる
資料メモができたら、今回の一冊がどこを扱うかを比べます。上の五種類を候補にした場合でも、次のように重点を変えられます。
| 企画の軸 | 先に決めたい範囲と資料 |
|---|---|
| 会社の歩みを広く紹介 | 確認する期間と、扱う事業・拠点を決める。会社案内、記録写真、社内報などから、会社全体の出来事を確認できる資料を探す。 |
| 特定事業の変化を記録 | 対象事業と、その変化を追う期間を決める。事業の冊子や関係する写真を中心にし、他事業は背景として必要な範囲に絞る。 |
| 今回の節目を記録 | 今回の取り組みと、記録する時期を決める。新しく用意する資料や写真を中心にし、過去の資料は背景説明に必要なものを選ぶ。 |
会社全体の歩みを扱う案で、初期の記録がほとんど見つからなければ、追加調査の範囲を相談することになります。特定事業の案でも、事業が始まった時期や変化を示す資料がなければ、どこまで確認できるかを先に確かめます。
今回の節目を中心にする案なら、これから撮影する写真や、取り組みが終わってから確定する情報もあります。「手元にある資料」と「刊行までに準備する資料」を区別し、配りたい時期と合わせて相談します。
保存する全資料と、本へ載せる資料を分ける
記録として残しておきたい資料の中には、今回の目的では本へ載せないものもあります。反対に、冊子の掲載資料が決まっても、それ以外の資料の保存方法や保管場所まで決まったことにはなりません。
まずは、保存やデータ化を相談したい範囲と、本に使う画像が必要な範囲を分けて伝えます。全部を撮影・データ化する相談なのか、今回選ぶ資料を先に撮影する相談なのかによって、数量や作業の確認も変わります。
本へ載せるかどうかは、資料の古さや見た目だけでは決められません。伝えたい出来事との関係、時期や内容を確認できるか、掲載できる範囲が決まっているかを見て選びます。選ばなかった資料を処分する判断とは分けて扱います。
社内の事実確認者と、企画を決める人を用意する
制作担当者が一人で会社の過去をすべて判断する必要はありません。沿革の年月や名称を確認する人、事業の内容を確かめる人、写真の内容を知る人など、必要な確認先を整理します。
それとは別に、今回の刊行範囲と掲載方針を決める人、校正をまとめる人、最終的に刊行を承認する人も確認します。社内でまだ決まっていない項目は、企画メモに未定として残し、決まった範囲から共有します。
外へ制作を依頼する際も、資料を調べる作業、追加取材、写真や文書の撮影・データ化、原稿や誌面の編集、社内の確認は、それぞれ誰が担当するかを相談します。冊子制作を頼むだけで、社内の事実確認や追加調査まですべて任せられると決めつけないようにします。
刊行範囲のメモから、撮影と冊子編集を相談する
年表に写真や古い冊子をどう組み合わせるかは、扱う期間と出来事を決めた後で考えられます。具体的な見せ方は、古いカタログを周年事業の冊子や展示に生かす構成もご覧ください。今回の範囲を決める段階で、細かな誌面をすべて作る必要はありません。
初回の相談には、「誰へ何を伝える本か」「扱いたい期間・事業」「資料の所在と未確認事項」「社内の確認者」を短くまとめると、今ある資料からの進め方を相談できます。まだ量や仕様が決まっていない項目は、そのまま未定とお知らせください。
複写 HUKUSYAの企業資料の撮影・データ化と冊子制作では、記録写真、会社案内、事業の冊子などから、紹介や共有に使う画像と本の編集をご相談いただけます。資料調査・追加取材・社内確認の分担も含め、今回の一冊で扱いたい範囲からお聞かせください。



